私たちが部下や同僚の「活躍」を素直に喜べない訳 日本の会社にチャレンジする人が現れないなぜ
今の日本にはチャレンジをする人材が必要だ。そこに異論の余地はない。しかし実際に、現場では「挑戦する人材」が歓迎されない。なぜ、理想と現実の乖離が起こるのか。この「総論賛成、各論反対」という意見にこそ、日本の組織を語るうえで重要な意味を持つと指摘するのは、同志社大学教授の組織学者である太田肇氏だ。大規模調査から見えてきた「日本人の本音」とは?(本記事は、太田肇『何もしないほうが得な日本』の一部を抜粋・編集したものです)。
人間は損得勘定で動いている
人間は「計算する動物」である。禁句ゆえ口には出さなくても、常に損か得かを計算しながら生きている。いっぽうで人間は「社会的動物」でもある。つまり計算されるのは経済的に損か得かだけでなく、人間関係や感情などの社会的報酬、心理的報酬も加えながら、損か得かを計算している。その意味で損得勘定には、「損得感情」が強く働いているといってよい。
会社のような組織のなかでは、上司・部下や同僚との人間関係が、社会的報酬として大きな比重を占めている。その社会的報酬には「正の報酬」と「負の報酬」の両方があり、それぞれが損得勘定に大きく影響する。
そして、そこへ日本社会特有の要素が深く関わる。すでに述べたように、日本企業は共同体型組織である。組織は閉鎖的で、社員の人間関係が濃密だ。そのため人間関係がもたらす「正の報酬」も「負の報酬」も大きい。
関係がよいときはすこぶる快適だが、悪くなるといたたまれない。いっぽうでは平等主義のため、欧米などの企業に比べて金銭的報酬に大きな差はつかない。だからこそ社会的報酬のウエイトがいっそう大きくなるのだ。
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