東武と秩父鉄道、東上線を「観光路線化」する狙い 埼玉の「プラチナルート」乗り放題券の成長余地

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東武東上線は池袋から川越を経て、寄居に至る75kmの路線。東京メトロ副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線と相互直通運転する列車が和光市から小川町まで乗り入れる。沿線はベッドタウンとして開発されていて、大学や高校なども多いため、通勤通学の利用が目立つ。浅草と北関東を結ぶ本線系統の「スペーシア」「リバティ」といった有料特急車両はなく、観光向けには料金不要の「川越特急」が走る。

終点の寄居まで行くには、一度小川町で乗り換えが必要になる。小川町から先はワンマン列車が走るローカル色の強い単線区間で、池袋―小川町間とは趣が一変する。風光明媚な荒川の渓谷にかかる橋梁を渡ると、JR八高線と秩父鉄道が乗り入れる寄居に到着。秩父線は、休日にはC58型蒸気機関車「パレオエクスプレス」が走る観光路線でもある。

秩父本線は、羽生から三峰口までの71.7kmの路線。羽生で東武伊勢崎線、熊谷で上越新幹線・JR高崎線、御花畑で西武秩父線と乗り換えができる。秩父のシンボル武甲山や、群馬県神流町の叶山で採掘したセメント原料の石灰石を運ぶ貨物列車が往来する。12月の秩父夜祭の際は山車が踏切を通過できるように一時的に列車を運休し架線を切り離すことでも知られる。

秩父へは西武鉄道が便利?

プラチナルート乗車券は当初、2019年7月から11月にかけての期間限定だったが、2020年7月に通年販売となった。東上線の主要駅から単純往復するだけでも元は取れる。プラチナルートを巡り、最大限にメリットを享受しようとするならば、朝に長瀞へ行き、秩父でランチ、帰りに川越に立ち寄る、といった使い方もできそうだ。

一方、プラチナルート上にはライバルも存在する。秩父へは西武鉄道が池袋から特急列車を走らせている。かつては「レッドアロー」、現在は斬新な外観とラグジュアリーな車内が自慢の「Laview(ラビュー)」と、西武はフラッグシップ車両を投入して観光路線として売り込みに力を入れてきた。秩父鉄道に乗り入れて三峰口・長瀞へ向かう直通列車もある。

また「小江戸」と呼ばれる川越エリアには東上線のほか、JR川越線と西武新宿線がそれぞれ乗り入れる。秩父から川越へは、西武線だけのルートや、JR八高線・川越線に乗り継ぐ経路など、秩父線も東武線も使わずに行くことができる。

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