「経済は長期停滞入りした」しか言えない人の限界 創造的破壊の理論で経済成長の5つの謎を解く

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電子的空間で操作をする女性
シュンペーター理論で説明できる経済成長の謎があると著者は指摘します(写真: Graphs/PIXTA)
経済成長論の権威であり、フランスをはじめ、世界最高峰の大学で教鞭をとるアギヨン教授が行った連続講義をまとめた書『創造的破壊の力:資本主義を改革する22世紀の国富論』の邦訳がついに出版された。
20世紀の偉大な経済学者シュンペーターが提唱した「創造的破壊」をベースに資本主義の未来を語る本書から、経済成長の5つの謎とシュンペーター理論の優れた点について、抜粋・編集して紹介する。

経済成長の5つの謎

経済モデルの出来不出来は、何らかの現象をよりよく解明できるかどうかで判断される。シュンペーターの創造的破壊のパラダイムは、いくつかの成長の謎を解くカギを示してくれる。

謎はいくつもあるが、ここではそのうち次の5つを取り上げたい。

■第1の謎 どうして経済は停滞から成長へと移行したか

経済成長はじつは最近の現象である。アンガス・マディソンの推定によると、世界の1人当たりGDPはキリスト生誕の1年後も1000年後も同じだという。

『創造的破壊の力:資本主義を改革する22世紀の国富論』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

そして1820年になっても、1000年と比べて53%増えただけだった。年率に換算すれば1/19%(約0.0526%)にすぎない。

1820年が過ぎてから、まずイギリスで、続いてフランスでテイクオフが起きる。

この2カ国の成長ぶりたるや、世界全体の1人当たりGDP成長率を、それまでの0.05%から1820〜1870年には10倍の0.5%に押し上げたほどである。

1950〜1973年には成長ペースに一段と拍車がかかり、年平均3%ほどに達した。

人類の歴史からすればごく最近になってからのこの突然の飛躍的な成長の加速は、どう説明したらよいのか。それに、中世以降重要な発見の多くは中国で行われたというのに、なぜテイクオフは中国ではなくヨーロッパで起きたのか。

次ページ経済成長の第2、第3の謎とは
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