「悪質なブリーダーを排除できず」法改正の問題点 「数値規制」より「資質」で精査すべきではないか

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「愛情」と「責任」を啓蒙し、ブリーダーに必要な知識と技術を学べる教育機関とライセンス制度の構築が望まれます(写真:HIME&HINA/PIXTA)

昨年10月、大阪府松原市のペットオークション会場で、ヨークシャテリア1頭をチャンピオンの子と誤認させるような表示をして販売した東近江市のブリーダーの男(63)が、不正競争防止法違反の罪で略式起訴されました。

この男は、2008年から13年間、無登録で犬199頭を飼い、うち179頭に狂犬病ワクチン接種をさせなかったとして、狂犬病予防法違反の罪でも略式起訴されています。

動物愛護管理法改正で規制強化

2019年に動物愛護管理法の改正に伴って、「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う管理の方法等の基準を定める省令(基準省令)」が2021年4月に制定、6月に施行されました。これにより、飼養施設のケージなどの数値基準が定められたり、1人が飼養、保管できる頭数に上限が設けられたり、飼育環境の管理基準が具体化されたりなど、さまざまな部分で数値規制がなされました。

しかし、悪質なブリーダーは排除されないままです。

今年10月には滋賀県内のブリーダー6人が、2020年12月までの5年間で総額約2億3500万円の申告漏れがあったことを大阪国税局から指摘され、約1億6000万円が所得隠しと認定されました。重加算税を含めた追徴税額は約7800万円。指摘されたブリーダーの大半が税逃れを認めているようです。

コロナ禍の「巣ごもり需要」で業績を伸ばしたブリーダーが、売り上げを意図的に申告しない、悪質な所得隠しをしていたのです。

実は、先の法改正による数値規制では、第一種動物取扱業者からあふれる犬や猫が約13万頭になることから、犬や猫の遺棄や殺処分、不適正飼養を防ぐために、基準省令に付則(経過措置)が設けられています。

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