「Z世代は中国に好感」世代で分かれる好感度の理由 岸田政権「嫌中世論」に頼る対中外交の危うさ

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日中会談の冒頭、握手する岸田文雄首相と中国の習近平国家主席(写真・時事)

岸田文雄首相が2022年11月17日、バンコクで中国の習近平・国家主席と3年ぶりの日中首脳会談を行い、悪化する関係の「仕切り直し」に入った。岸田氏の対中改善には、嫌中世論と関係改善に否定的な自民党右派の「2つの壁」が立ちはだかる。しかし「嫌中世論」と言っても、18~29歳のZ世代の中国好感度は、なんと40%超にも上り世代格差が広がる。Z世代の政治的意思が選挙のカギを握り始めた世界の潮流をみると、「嫌中世論」と「右派」ばかりに頼る岸田外交は危うい。

日中首脳会談「脅威」使わず

日中関係は、2020年3月に習氏訪日がコロナ禍を理由に延期されて以来、日米同盟を「地域安定枠組み」から「対中同盟」に変化させ、尖閣諸島(中国名:釣魚群島)周辺での中国公船の活動をめぐって悪化の一途をたどってきた。

日中首脳会談はわずか45分。3時間以上に及ぶ米中首脳会談に比べると、中国にとって日本の比重低下は否めない。両者とも笑顔でカメラに収まり、安倍晋三元首相の2014年訪中当時、習氏が見せた「仏頂面」とは明らかに雰囲気は変化した。安倍氏が習氏訪日を招待した3年前のレベルに戻った。

会談のテーマでは、岸田氏が「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調したのに対し、習氏は「内政干渉は受け入れない」と反発、それぞれ主張をぶつけ合った。その一方、習氏は「海洋と領土の問題は意見の相違を適切に管理しなければならない」とも述べ、領土紛争を対話と協議で解決する姿勢を見せた。中国にとり「核心利益中の核心」の台湾とは異なり、領土問題は妥協可能なテーマである。

合意点は、①外務・防衛当局高官による「日中安保対話」の開催、②緊急時に防衛当局間をつなぐ「ホットライン」の早期開設、③閣僚級のハイレベル経済対話の早期再開、④林芳正外相の訪中調整、など。今後の改善指標の1つは、習氏訪日を含む首脳相互訪問の実現になる。

岸田氏は東シナ海情勢で「深刻な懸念」を表明したが、自民党右派が主張する「脅威」という表現を使わなかった。年末に閣議決定する「国家安全保障戦略」では、中国を「脅威」とみなす表現は使わないことを示唆した。

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