ゆるミニマリストと称する人が目指す理想の生活 ミニマリズムとお片付けを足して2で割るような生き方

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ミニマリスト
割り切ったリアリズムが必要とされている(写真:Fast&Slow/PIXTA)

近年、インスタグラムやYouTubeを中心に「ゆるミニマリスト」「シンプリスト」といった人々が積極的に情報発信を行い、多くの支持を集めている。従来のミニマリズムやお片付けとは少し異なり、極端にモノを減らすことや、体系的なメソッドからは距離を置き、手軽にシンプルライフを送ろうとする動きだ。ミニマリズムやお片付けと同様に「心に余裕ができる」「幸福度が上がる」「お金が貯まる」といったメリットが強調されている。

特に「ゆるミニマリスト」は、若い女性をはじめとして、「捨て活」とおしゃれに暮らすことを両立させる知恵として脚光を浴びている。かいつまんで紹介すると、無理をしない範囲で所有物を少なくする「ゆるいミニマリズム」を実践しながら、お気に入りのインテリアや装飾といった「理想の住空間」の追求を目指す立場の人々である。

物質主義的な生き方に対する反動

ミニマリストといえば、何もない真っ白な部屋のフローリングに、住人がぽつんと座っている殺風景なイメージを思い浮かぶ人が多いのではないだろうか。実際、ベッドやソファー、冷蔵庫や電子レンジなどの家電すら処分してしまう人たちがいる。ミニマリズムには、身の回りのモノを減らして、物欲を抑制することで幸福になれるという考えがあるからだ。

アメリカ発のミニマリズムは、もともとエリート層の物質主義的な生き方に対する反動として始まった。例えば、有名なミニマリストユニットである「The Minimalists」のジョシュア・フィールズ・ミルバーンは、かつては数十万ドルの収入があるエリートビジネスマンだった。大きな家と高級車、多数のブランド品に囲まれ、望むものは何でも手に入ったが、精神的には貧しく不幸だったと振り返っている。

モノの消費によるステータスの向上、つまり際限ない物欲を満たすことによる幸福の実現は、借金(ローン)や過重な働き方を強いることから、次々と負債とストレスが積み重なって、何も良いことはないという実感に基づいていた。そこから「足るを知る」こと、モノは量ではなく、質が重要だとの認識が生じることとなる。

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