村田製作所の中国増産投資はなぜ非難されるのか 経済安保をめぐり性急な企業批判が台頭する危うさ

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村田製作所は中国における大規模な設備投資を発表した(編集部撮影)

電子部品大手の村田製作所が発表した中国工場の生産能力増強投資が、奇妙な非難にさらされている。同社は11月7日に中国・無錫にある工場で新生産棟を建設すると発表。投資額は約445億円で、同社の一度の設備投資としては過去最大規模だ。

この発表や関連報道を受けて、ツイッターを中心にネット上では村田製作所への非難が飛び交った。「台湾有事が起き国防動員法が発動されれば工場は接収され、中国は積層技術をタダで入手できる」「“中国命”の同社の今後に注目。それにしても株主がこれを許すならそのほうが信じがたい」との批判や皮肉が、多数のフォロワーを持つ一部の有識者や作家などによって発信され、それに合わせて同社を非難し揶揄するコメントが相次いだ。

日本の利益損なう的外れな非難

いずれも「経済安全保障」を念頭にした批判だろう。主な批判の論点は、米中対立に伴う経済デカップリングへの対応、中国による先端技術奪取の脅威、有事などによるサプライチェーン寸断時の日本国内の物資不足への懸念の3つで、同社の投資はそれらを無視しているという。

コロナ禍でサプライチェーンが混乱した際、日本は中国に生産を依存していたマスクや日用品、電子機器などの不足に見舞われた。また、かつては日本が先頭を走っていた「日の丸液晶」など各産業技術も韓国などへ流出し、競争力を失った要因の1つとなった。

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