中国「メタバース」銘柄が上場初日に公募割れ 飛天雲動科技、プラットフォームは「初歩段階」

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飛天雲動科技は「メタバース企業」を自称して香港上場を果たしたが、実質が伴っていないとの見方もある(写真は同社ウェブサイトより)

メタバース(仮想空間)関連企業との触れ込みで香港証券取引所に上場した中国のベンチャー企業の株価が、取引初日に公募割れとなった。

その企業は、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)のコンテンツサービスを手がける飛天雲動科技(フローイング・クラウド・テクノロジー)だ。同社は10月18日、売り出し希望価格の下限に近い1株当たり2.21香港ドル(約42円)で2億7150万株の新株を発行し、香港市場のメインボードにIPO(新規株式公開)を果たした。

ところが、同社の株価は初日の取引開始直後から急落。一時は売り出し価格の9%安まで売り込まれた。株価はその後も軟調に推移し、18日の終値は2.12香港ドル(約40円)と売り出し価格の4%安で引けた。その結果、飛天雲動科技の時価総額は約38億香港ドル(約720億円)となり、会社側が上場前に提示した予想値の46億香港ドル(約871億円)を下回った。

飛天雲動科技の前身は、2008年に北京で創業したゲーム開発会社だ。2019年にゲーム事業から撤退し、ビジネスの重心をAR・VRのコンテンツサービスに移した。そして2021年、メタバースのコンセプトが中国でにわかに脚光を浴び始めたのをきっかけに、メタバースのプラットフォーム構築に乗り出した。

主力のAR・VR事業は好調だが…

とはいえ、飛天雲動科技の主力事業は現在もAR・VR関連のサービスだ。AR・VRコンテンツやその開発ツールを用いて、顧客の広告制作やマーケティングを支援している。また、顧客毎に異なるカスタムメードのAR・VRコンテンツの作成や、顧客がクラウド経由でAR・VRコンテンツを自ら開発できるSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)のプラットフォーム運営なども手がけている。

バーチャルリアリティーの一般化とともに、さまざまな業界でVR・ARコンテンツの活用を試みる動きが増えている。飛天雲動科技はその追い風をとらえ、業績を右肩上がりに伸ばしてきた。同社の売上高は、2019年の2億5100万元(約52億円)から2021年には5億9500万元(約123億円)に拡大。損益もすでに黒字化しており、2021年の調整後純利益は1億600万元(約22億円)と前年比71.4%の増益を達成した。

しかし、飛天雲動科技が(上場にあたって)「メタバース企業」を自称したのは、かえって投資家の疑念を招いた可能性がある。

本記事は「財新」の提供記事です

同社が2021年11月に発表した「飛天メタバース」は、ユーザー同士の交流機能を備えたメタバース・プラットフォームであり、実際に商品の取引ができる「バーチャル商店街」の機能を含んでいるという。だが飛天雲動科技によれば、その展開はまだ初歩的段階にとどまっている。

(財新記者:関聡)
※原文の配信は10月18日

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