無責任で人任せの息子を持った親の「介護の顛末」 認知症とがんを患う母親、自宅で転倒し骨折…

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KuKuRuで診察する中村医師(本文に登場する人物とは関係ありません。撮影:向日葵クリニック)
コロナ禍で病院での面会が制限されていることなどを背景に、需要の高まりを見せている在宅ケア。家での療養生活を支えるのが、患者宅を訪問して診療を行う在宅医などだ。
これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期まで自宅で過ごしたい」という患者の希望を叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。
7回目のテーマは、離れた場所に住む家族が、在宅ケアや施設選びにどう関わるかについて。2つの事例をもとにポイントを解説する。

今回は、2つの事例を対比しながら、離れた場所に住む家族のケアへの関わり方について説明したいと思います。

親の介護も人任せ――Aさんの息子

まずは、千葉県在住のAさん(女性・80代)。私が週に一度、外来診療を担当する病院への受診をきっかけに、在宅医として関わり始めた患者さんです。がん終末期で認知症のAさんと最初にお会いしたとき、Aさんは1人で病院に来ていたのですが、記憶があいまいで、生活を含めた状況がよくつかめません。そこで、遠方に住む息子さんに連絡が取れて合意を得られたら、訪問診療を開始するという段取りを組みました。

息子さんは50代、他県で会社員として働いています。初めて息子さんと電話でお話したときは好印象だったのですが、徐々に息子さんの態度に対して、疑問を持つ場面が増えていきました。

きっかけは、訪問診療を開始した数カ月後。Aさんが自宅で転倒してケガをし、1人での生活が難しくなったときのことです。Aさんには、がんの進行による痛みもありましたが、認知症の影響から適切なタイミングで痛み止めの薬を飲むことができず、がんの痛みが強まっていました。そこで息子さんに相談したのですが、返ってきたのは「そちらで何とかしてください」というひと言。

もちろん私たち在宅ケアを支える側も、できる限りサポートします。しかし、主体はあくまで患者さん本人や家族。大事な場面での意思決定となれば、なおさらです。

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