日本企業「人に投資しないクセ」が矛盾だらけの訳 人的資本経営という流行を単に入れても効果なし

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労務 経営
企業でよく見られる人材マネジメント上の矛盾とは?(イラスト:tiquitaca/PIXTA)
人々の知識、スキル、能力などを指す「人的資本」への投資を増やすべきであるという考え方が注目を集めている。
一方で、そこには「企業で良く見られる人材マネジメント上の矛盾がある」と指摘するのは事業創造大学院大学の一守靖教授。最新刊『人的資本経営のマネジメント: 人と組織の見える化とその開示』から一部抜粋して再構成。全5回の連載第2回をお届けする。

矛盾の解消を意識しながら改善する必要がある

欧州各国では、約40年以上も前から「目に見えない資本」の測定と開示に取り組んでおり、今や世界の潮流となっている。遅ればせながら、日本においても、内閣官房が今年8月に「人的資本可視化指針」を発表した。

その中で強く訴えられているのは、経営戦略の実現につながる人事戦略を策定し、各人事施策の間に一貫性と整合性があり、それにより目指す姿(目標)やモニタリングすべき指標を特定・測定し、測定結果に対して必要な対策を講じる経営の必要性である。

一方、「人事は流行に従う」という表現が示す通り、企業は流行りの人事制度をそのまま自社に取り入れてしまうことがしばしば見受けられる。その結果、整合性どころか矛盾だらけの人材マネジメントになってしまう。

すなわち企業は、「人的資本」への投資を進めると同時に、この矛盾の解消を意識しながら改善していく必要がある。

【日本企業における一般的な人事制度:職能資格制度】

ジョブ型雇用の導入が拡がりつつあるとはいえ、まだまだ日本企業の多くが「職能資格制度」という人事制度を採用している。

「職能資格制度」とは、職務の遂行能力に応じて社内の資格等級が決まり、その資格等級に応じて賃金が決まる、日本的雇用慣行の中心となる制度である。

また、この制度は、「ヒト」の属性(能力や勤続年数など)を基準としているので、「人基準」の人事・賃金制度だといわれる。

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