「奨学金620万円」33歳彼が就活で見た貧富の連鎖 家が金持ちな人ほど経験を積み、いい会社に入る

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奨学金620万円を借り、都内の私立大学に進んだ小原博さん(33歳・仮名)。お金がなかったためサークル活動を断念し、就活で話すエピソードに困ったと振り返ります(写真:mapo/PIXTA)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

たびたび聞く家庭事情、3つの要素

この連載に登場する者たちの話でたびたび出てくるのが「3人きょうだい以上」「親と不仲」「奨学金に理解のない親族」という3つの要素だ。

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今回話を聞いた中京地方出身の小原博さん(33歳・仮名)も、「親との関係性が悪く、家出まがいの上京を果たした」という人物である。

「両親は共働きで、双方とも年収はあり、とくに貧乏というわけではなかったのですが、とにかくお金の使い方が荒かったんです。車を頻繁に買い替えたり、別に祖父母と住むわけでもないのに、二世帯住宅を建てたり、毎年旅行に行く……。恵まれた生活ではありましたが、貯蓄はありませんでした」

小原さんが生まれ育ったのは工業地帯。最終学歴が高卒でも仕事には困らないような地域である。彼の両親も高卒で就職しているため、仮に貯蓄があっても大学進学までの理解は得られなかったようだ。

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