「鉄道後進国」日本で新幹線が誕生した3つの背景 歴史や世界の状況を知れば日本の状況が見える

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イギリス国立鉄道博物館に展示されている初代新幹線電車0系(右)とユーロスター(筆者撮影)

新橋・横浜間を結ぶ日本初の営業鉄道(運賃などを収受して運営する鉄道)は、1872年10月14日に開業した。日本では、これにちなんで10月14日を「鉄道の日」と呼んでいる。今年の「鉄道の日」は、日本初の営業鉄道の開業からちょうど150年目に当たるため、JRグループなどの鉄道事業者がそれを記念したキャンペーンやイベントを行っている。

この日本初の営業鉄道は、主にイギリスからの技術や資金の支援があってこそ実現した。イギリスは世界に先駆けて蒸気機関車を開発し、今から192年前の1830年9月15日に本格的な営業鉄道を世界で最初に開業させた「鉄道発祥国」である。

つまり日本は、イギリスよりも42年遅れて営業鉄道を導入した国なのだ。また、日本よりも先に営業鉄道を開業させた主な国としては、イギリスの他にフランスやドイツ、アメリカがある。これら4カ国から見れば、日本は「鉄道後進国」であり、かつては4カ国の技術的支援がなければ、自国の鉄道の建設・運営・維持をできなかった国だったのだ。

なぜ世界のトップになれたのか

ところが日本は、1964年10月1日に世界初の高速鉄道である東海道新幹線を開業させ、世界最速(当時)の営業列車を走らせた。「鉄道後進国」だった日本が、いきなり前例がない高速鉄道を開業させ、営業最高速度で世界のトップの座に上り詰めたのだ。

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なぜ日本は、4カ国よりも先に高速鉄道を開業させることができたのだろうか。その理由は、日本の鉄道史だけでなく、世界の鉄道史や他交通の歴史を把握することで見えてくる。

そこで海外の主要鉄道保有国である4カ国の鉄道史や他交通の歴史を踏まえながら、日本が新幹線を生み出した背景を探ってみよう。

まず結論から言うと、日本で新幹線が誕生した背景には、以下に示す3つの要因がある。

(1)高速走行の実績が海外にあった
(2)既存の鉄道の輸送力が逼迫していた
(3)戦前に新幹線に似た計画があった

それぞれ詳しく説明しよう。

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