世界の「経済政策バブル」が弾けようとしている 「八方美人」という方針をとり続ける日本の末路

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ドイツのエルマウで開かれたG7首脳会議。世界の「経済政策バブル」が弾けようとしている(写真:ブルームバーグ)

前回の「ついに『日本が独り勝ちする時代』がやってきた」は多くの読者が読んでくれたらしい。今回は、前回のまとめとその続きである。ひとことで言えば、世界の経済政策バブルは弾ける一歩手前にあり、日本も例外ではないということだ。

ついに「あとがなくなった」

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

1990年前後以降、現代経済社会はつねにバブルであり、ぜいたく品という余計なものばかりを作るようになった。

流行の終わったぜいたく品に飽きた消費者に、次々と新しいぜいたく品を欲望させ、消費させ、達成感を与え、豊かさを演出してきた。

しかし、ただ無駄なぜいたく品はすぐ飽きられる。よって、企業として消費者を支配し続け、利益を拡大し続ける「必勝法」は、必需品と思わせるぜいたく品を生み出し、これを永続的に欲する消費者を大量に獲得することである。これが大成功すると、人々はそれを「イノベーション」と呼び、称賛する社会になった。

本当は必要ないものを必要と思わせ、かつ永続的にそれを欲せさせるために、本能的欲望を刺激するような中毒性のあるものが継続的利益を生み出した。ゲーム、スマートフォン、SNSなど、これら“麻薬”を買える余裕のある消費者が増えることが経済規模拡大となり、経済成長とされるようになった。

しかし一方で、これが可能だったのは、経済全体がバブルであったからで、膨張する金(カネ)を次々と生み出す必要があった。社会主義の崩壊によるフロンティアとして生まれた移行経済と新興国を、ぜいたく消費経済市場に取り込んだ。

このフロンティアがなくなると、今度はサブプライムバブルなどの金融資産バブルを作った。それが崩壊すると、中央銀行を動員して、量的緩和バブルを作り、それも使い尽くした。

さらに「コロナショック」が起きると、最終手段として最後の財政出動を行った。中国という、欧米とは異質の経済のバブルと中国財政出動の助けも借りたが、欧米も中国もバブルは崩壊寸前となり、現在ではあとがなくなっている。もはや動員する資源が世界中のどこにもなくなった。

一方、この「ぜいたく品、麻薬品バブル」の裏で起きていたことは、必需品の不足であった。

次ページ「ぜいたく品競争」の裏で必需品の生産が手薄に
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