「奨学金150万円」46歳彼のグッジョブだった3決断 「奨学金は少し足りないぐらいがちょうどいい」

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市本康晃さん(46歳・仮名)は奨学金150万円を借り、都内の難関国公立大学に進学した男性。社会人になって奨学金を返済するなかで、「奨学金は少し足りないぐらいがいい」と思うようになったと語ります。その理由とは?(写真:miya227/getty)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

極端に不幸な例ばかり取り上げがちだった、これまでの奨学金報道に問題意識を感じ、新たな視座を提示している本連載。そんな筆者の思いが通じているのか、最近は奨学金を借りることに対して「未来への投資」と捉える元・奨学生から取材希望の応募が数多く届いている。

しかし、「奨学金はたくさん借りたほうがいい」と豪語する人がいる一方で、「奨学金は少し足りないぐらいがいい」と語るのが、今回話を聞いた市本康晃さん(46歳・仮名)だ。

父親「東大以外の学費は出さない」

「80年代後半、私の地元の中学校は荒れていて不良がたくさんいる状況でした。そこで、6年生のときに親に頼み込んで中学受験させてもらったんです。僕が『ダイビングやりたい』『英会話やりたい』と言ってもお金を出してくれる家庭だったので、恵まれていたほうだったと思います。妹も僕を見て受験することになり、中学から私立に通っていました」

両親は会社員と看護師で共働きで、特に貧しいというわけではなかったが、父親は学歴信仰が強く、市本さんは常に「東大以外の学費は出さない」と言われて育ったという。

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