理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉、中座し戻らぬ人事部長

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雇い止め問題に揺れる理化学研究所
理研の大量リストラ方針を巡り、労働組合との交渉は平行線をたどる(記者撮影)
理研人事部長A氏「面接終わりました。雰囲気的に(労使交渉の席に)戻ったほうがいいですか?」
理研幹部B氏「戻らずに17:00で終わらせる方が、(会議を)長引かせないと思います」
理研幹部C氏「終わりましょう」
※()内は編集で補足、他は原文ママ
(研究員の苦境は本日配信の記事「迫る大量リストラ、理研研究者が募らせる危機感」に)

 

今春に発覚した、理化学研究所が有期雇用の研究者らを2023年3月末で大量にリストラする方針を巡り、撤回を求め続けている理研労組との秋の労使交渉が9月15日の夕方に行われた。開始から間もなくで2時間になる午後5時前ごろ。理研は組合が会議の続行を求めるのを遮り、「今日はこれで終わりにします」と打ち切った。

理研関係者によると、交渉はリモート会議で行われた。理研側の出席者は個別のアカウントで出席しつつ、裏ではグループチャットを使って連絡を取り合っていたという。東洋経済は理研関係者から、その時のグループチャットのスクリーンショットを入手した。

理研の人事担当らが交渉中にしていたチャット
労組との交渉中、理研幹部らはチャットで「長引かせないで終わりにしましょう」などとやりとりしていた(画像の一部を加工。関係者提供)

そこには、面接を理由に会議を早々に中座した後、会議に戻れたのに戻らなかった人事部長と、他の幹部の生々しいやり取りなどが記録されていた。その一部が冒頭の内容だ。

この事実に対し、交渉に出席していた組合幹部は「少しでも早く話し合いを進めるべきだが、理研側には誠実さがない」と憤る。3月末で契約の更新を打ち切られる研究者は、「私たちには残されている時間がないのに」と悲しみの表情を浮かべた。

3月31日、大量の研究者が雇い止めに

理研は、2023年4月1日で有期雇用の通算期間が10年を超える研究者の雇用契約を、1日前の2023年3月31日で終了するとしている。

組合によると今春の段階では、研究者の雇い止めで波及的な影響を受けるスタッフらを含め、約600人が職を失う見通しだった。その後、雇い止めを待たずに理研を去った人がいるため、現時点では約400人がリストラの危機にある状況だ。

2013年4月1日に施行された改正労働契約法で、通算の有期雇用の期間が一般の会社員の場合は5年、研究者など一部の専門職の場合は10年を1日でも超えれば、労働者側は無期転換申込権を得られるようになった。雇用者側に拒む権利はない。

無期転換申込権の発生に先立ち、理研は2つの手を打っている。1つ目が、2016年4月に施行した就業規則の改定だ。理研は有期雇用の研究者の雇用上限は最大で通算10年までとすることを決め、2018年には起算日を2013年4月1日に遡ることを新たに定めた。

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