後塵拝した仏ゲーム会社が世界を席巻し始めた訳 「デトロイト・ビカム・ヒューマン」の次を狙う

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冷徹な機械のアンドロイドに人間の感情が徐々に芽生え、不正と対峙するなど細かなストーリーも描かれている。プレーヤーの選択次第でストーリーは変化。「モーション・キャプチャー」を駆使した画像がプレーヤーの没入感を高める。

クァンティック社
クアンティック・ドリームのギヨーム・ドゥ・フォンドミエール共同CEO(筆者撮影)

当初はプレイステーション4専用ソフトだったが、現在はPC向けにも配信。世界で735万本超の累計販売本数を記録しており、日本語版も好評だ。「日本での成功は驚き」とフォンドミエール氏は語る。

「日本のプレーヤーは感情的に心を動かされやすい傾向があり、ゲームのストーリーが受け入れられたのではないか」(同氏)。ゲーム愛好家の20代後半の男性は「登場キャラクターのナレーションなどにも、ストーリーを重んじる姿勢がうかがえる」と話す。

仏中大手企業どうしの連携強化の動きが表面化したのは、これだけでない。『アサシン クリード』シリーズなどで有名な仏ゲーム業界最大手のユービーアイソフトは9月6日、中国のIT大手で、ゲーム事業でも世界をリードする騰訊控股(テンセント)が同社への直接出資比率を従来の4.5%から9.99%へ引き上げることを取締役会が承認したと発表した。

「テンセントとの契約はわれわれの持つ豊富なラインナップを反映したもの。それらは業界において最も強力なコンテンツの1つである」。ユービーアイソフトはそう強調した。

独立系の制作会社も存在感

一方、独立系ゲーム制作会社のミクロスタジオもクアンティック社と同様、「ストーリーテラー」ともいうべき存在だ。東京ゲームショウで来日したミシャエル・ぺフェール氏が2010年にフランスのリヨンで創業した。代表作は『アウト ゼア』。宇宙を舞台にしたアドベンチャーゲームだ。英語、ロシア語、中国語、スペイン語、ポルトガル語などさまざまな翻訳版も投入し、累計販売本数は150万本を超える。

ミクロ・ステュディオ
ミクロスタジオ創業者のミシャエル・ぺフェール氏(筆者撮影)

高校時代は「ゲームは日本のメーカーだけが制作するもの」と思い込んでいたぺフェール氏。カプコンの『ストリートファイター』などに慣れ親しんでいたが、「戦闘を前提にしない」のがストーリーに対する現在のこだわりだ。『アウト ゼア』には武器を発射する宇宙船などが登場しない。「ゲームにはさまざまな可能性があるのに、暴力のシーンを取り入れるのは安易なやり方」と話す。

今回の訪日では日本のクリエイターらと関係を構築。今後の制作で「ジャパニメーション」などに着想を得たい考えだ。

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