「連合会長の国葬出席」が労働者の分断を深める訳 「労働者の代表」として出席、傘下労組は反対

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連合の芳野友子会長
安倍晋三元首相の「国葬」への出席を表明した連合の芳野友子会長(写真:ブルームバーグ)

連合の芳野友子会長の安倍晋三元首相の「国葬」(9月27日開催)への出席表明に、足元から異論が噴き出している。企業の枠を超え、非正規労働者らも組織する傘下の産業別労組「全国コミュニティ・ユニオン連合会」(全国ユニオン、鈴木剛会長)が19日、反対声明を出し、同日、東京・代々木公園で開かれた大規模な反対集会でも労組員の参加が目立った。

世論調査でも反対が過半数を占めるさなかでの出席表明は、働き手の分断や労組の求心力の低下をもたらし、長期的にはデフレ脱却に不可欠な賃上げ圧力の弱まりにつながる恐れさえある。

芳野会長が国葬への出席を表明したのは、9月15日の記者会見の席だ。連合ホームページの「記者会見全文」によると、政府から国葬の案内状が届き、「政労使三者構成の一角である労働界に政府から案内が来たことについて、海外から来賓が多く参列する中で労働側代表としての責任をどう果たしていくべきなのかということ」「国葬のあり方については整理されるべきだが、総理大臣経験者が凶弾に倒れたこと自体に弔意を示すこととは区別する必要があるのではないかということ」などを踏まえ、「苦渋の判断」に至ったという。

報道各社の世論調査で国葬への反対が多数を占める結果にもふれ、「政府説明を経てもなお国民の理解が広がったと言える状況にはない」「今からでも国民の理解につながる具体的な対応を取るべきである」と注文もつけている。

傘下の全国ユニオンは反対声明を発表

これに対し、全国ユニオンは19日、鈴木会長のツイッターを通じて反対声明を発表した。

理由は、①国費で営む葬儀である国葬は、1947年の国葬令の失効後、根拠法令がない、②憲法83条に国の財政には国会の決議が必要とあるのに、それをせずに支出を決めた、③労働者らの反対を押し切って、労働時間規制を破壊する「高度プロフェッショナル制度」や不安定を永続化させる労働者派遣法の改悪などを成立させた人物の国葬に、「労働者の代表」である芳野会長が出席して弔意を表することに強い違和感を抱く、という3点で、発表後1日で、約1万件の「いいね」が寄せられたという。

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