
<主催者講演>
「戦略的サービス事業への変革」
製造業においてサービスによる収益性の向上が求められている現状について、PTC SLMセグメント ディビジョナル ゼネラル マネージャーのリー・スミスが解説した。

近年は、製造業においても、製品を長期にわたって利用することを通して得られるサービス利益が重要視されるようになっている。また、他社との競争を有利に進めるため、そもそもの販売対象を製品ではなくサービスそのものにシフトする動きも見られる。こうした変化を支える業務プロセスやITの仕組みが求められているが、多くの企業がサービスの提供コストの増加などにより、「一時的に利益が減少する」という課題を抱えているのが現状である。
こうした課題を解決しサービス事業を継続的に成長させるために、PTCサービスライフサイクル管理(SLM)の開発方向性は、モノのインターネット(IoT)を考慮してお客様先で使用している製品の稼働状況を把握し、サービスをより迅速に、事前に、効率的に提供可能にすることに向けられている。これにより「現場で起きていることをリアルタイムに把握し、素早い対応が可能となる」とスミスは言う。また、製品がつながることで、サービス パーツ在庫の需要予測をより正確に行えるようになり、在庫レベルが最適化され、予防的な保守作業を提案したり、製品情報や品質情報を設計にフィードバックし改善するサイクルもできるようになる。
「サービス事業においても競争が激しくなってきている中で、変革にはリスクもあればチャンスもある。PTCでは製造業の方々が変革に追随できるようサポートします」とスミスは強調した。
<海外事例> インガーソル・ランド
「成果に基づく『製造業のサービス化』を実現」
製造業のサービス化をテーマに海外事例講演を行ったのは、産業向けのツール類を製造、販売するインガーソル・ランド北米営業・サービス担当バイス プレジデント&ゼネラル マネージャーのジョセフ・M・バーグマン氏だ。バーグマン氏が担当する「トレイン」ブランドは圧縮空気に関するツール類を製造しており、それを用いて家庭やビルなどの空気の質や快適さ向上を提供している。

「インガーソル・ランドの売上の20%程度を先進的なサービス契約が稼ぎ出しており、サービスパーツ売上関連も含めれば、サービス事業全体の売上は全売上高の約30%になります」と利益に占めるサービス事業の割合は増加傾向にあると語るバーグマン氏。適切なサービスを自社で提供することで、エンドユーザーが望む製品改良も行えるなど、製品の品質を上げることができる。またサービス事業には景気が悪いときにも全体の落ち込みを抑える効果があるという。
トレインが展開するサービスは、「建物の中の快適な温度」を提供するというものだ。この新たなサービス事業の展開で、インガーソル・ランドはPTCの製品を活用している。サービスのプランニングは製品開発のプランニングとは異なる。さらにサービス事業ではモバイル対応もさまざまなシーンで必要になる。これら新たなニーズに対応していたのが PTCの製品だった。
「製品で競合するところはありますが、サービス事業では競合はありません。お客様からの高い評価の半分はサービスから来ています。サービスの話をお客様とすることで、ビジネスを勝ちとれるチャンスが広がっています」とバーグマン氏は語る。
インガーソル・ランドでは、今後もさらにサービスを重視していくという。それにより「お客様と密に連携し、企業としてのメッセージをお客様に届ける」ことができるとバーグマン氏は結んだ。
<海外事例> フィリップスヘルスケア
「サービス業務の変革により顧客価値を確保」
フィリップスのヘルスケア事業は売上高の43%を占める。フィリップスヘルスケア サービス パーツ サプライチェーン部門担当 バイス プレジデントのジョン・シュランジャー氏は「フィリップスは世界をより健康に、そして持続可能な世界にすることを目指しています」と言う。

フィリップスヘルスケアが扱うのは、さまざまなモニタリング機器や治療活動をサポートする機器、さらには心臓発作から命を救う AED(自動体外式除細動器)などである。家庭で使用する医療機器もある。
機器提供だけでなくインフォマティクスで情報を共有し活用もしており、カスタマーサービスやコンサルティングサービスも展開する。「カスタマーサービスでは、カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)が重要です」と語るシュランジャー氏によると、「製品はもちろんのこと、お客様ともつながり、製品ライフサイクル全体で関係性を維持したい」とのこと。そのためには人をケアする観点も必要だと語る。
フィリップスヘルスケアのサービス事業は臨床サポート、パフォーマンス、メンテナンスの3つに分類される。臨床サポートでは世界で利用されているあらゆる製品の稼働状況をもとに活用方法を提案する。パフォーマンスでは製品のライフサイクル全体でケア品質を向上させながらコストを最適化する。メンテナンスは、常に機器を遠隔から監視し故障の予測を行うことで、ダウンタイムを最小化している。
「製品とサービスをいかに近づけられるかを追求しています。たとえば、設計段階からサービス性の高いものを作るには、サービスから設計に情報をフィードバックする必要があります。これは全社規模の大きなプロジェクトとして現在取り組んでいます」(シュランジャー氏)
そのためにはナレッジ管理が重要だが、従来は必要なものが探し出せなかったり、国や製品ごとに手順が異なっているという課題があった。そこでPTCの製品を導入したことで、現場技術者がすぐに情報を得たり、視覚的に必要なパーツを判断して、そこからすぐにパーツ発注ができるようになった。「すべてのサービスパーツの管理をPTCの仕組みで行っています。それが他社に対する優位性にもなっています」とシュランジャー氏はPTC製品導入の効果を語る。
従来は在庫予測に何種類もの分析手法を用いて複雑化していたのも、PTCのサービスパーツ・サプライチェーンの仕組みを導入することで、需要予測を1つのアルゴリズムで行えるようになった。予測精度も上がり、最適化で即納率も高められたという。「以前は4週間かかっていたものが4時間で対応できるようになったものもあります」(シュランジャー氏)。
これらの取り組みを始めてから2年半ほどが経過したが、単に在庫即納率が向上しただけでなく、お客様にどのような価値を提供できたかも含め、新しいサービスパーツ・サプライチェーンの仕組みが十分に経営層にも理解されるようになったという。
<国内事例> シャープ
「“グローバルCSの向上を目指して”―シャープ(株)の取組み」
シャープ株式会社 CS・環境推進本部 副本部長 兼 CS企画統轄の中川 潤子氏は、CS(顧客満足度)の向上を目指しシャープがどのようにサービス事業に取り組んでいるかを紹介した。「『誠意と創意』という弊社の経営信条は CSの精神に非常に近いと感じています。すべてのお客様にいかに満足頂き、喜んでもらえるかを目指しています」と言う。

CSは「品質」と「サービス」によって成り立ち、この 2つを中川氏が所属する CS・環境推進本部が管轄している。各事業本部の品質統轄部門とも連携し CS、品質の向上には全社で取り組む。「サービスの対応が良ければお客様はシャープ製品のリピーターになって頂けます。再購入意向率がCSのKPIです」と中川氏は語る。
そのためシャープでは、お客様相談センターにおける「お客様応対」と「アフターサービス」の充実やグループ会社のシャープエンジニアリングの出張修理における「+5運動」(修理完了後にさらに5分間顧客対応する)など、CS向上に努めている。また、相談応対の過程で得られる情報を各事業部にフィードバックするのも重要だと考えている。年間およそ350万件の相談を受け「おもてなしの心でお客様の立場に立って対応しています」と中川氏。そのためにはお客様の状況を的確に理解し、担当者の解決力や技術力向上のためのナレッジ蓄積も重要だという。
サービス事業では、お客様がうまく機器などを使えず故障だと思い相談してくる「不具合相談」の増加が課題となっている。これは会社にとって無駄なコストとなり、CSも低下させる。この課題を解決するために、簡単メニューを搭載したり画面操作環境を改善したりと製品面でも改善に取り組んでいる。また、サービスで得た知見をベースにCS推進本部と事業部が商品企画段階から連携している。「不具合相談」の増加は海外主要拠点のコールセンターでも課題になっているが、「日本でも海外でも共通に使えるナレッジがたくさんあり、それを翻訳し蓄積しています」と中川氏。
このグローバル ナレッジ システムで PTCのソリューションが採用されている。選択理由は 23カ国語に対応し「検索がさまざまなアプローチで行えるところも評価ポイントです。さらにコンテンツ比較機能もいい」と中川氏。このシステムはインドネシアとオーストラリアにまず導入されたが、インドネシアでは 導入後2 年で不具合相談が 30% 減少したという。
シャープではサービス活動による更なるCS向上を目指し、新たにサービスパーツ業務の改革にもチャレンジする。そのために、PTC(R) Service Parts Managementの導入も決めた。サービスパーツの管理は、従来は人手や過去の経験に頼っていたが、新たなシステムを用いた適切な需要予測を行うことでパーツの生産、販売、在庫を最適化し、人的リソースの削減も目指す。
日本に比べ海外についてはまだこれからの部分もあるが「CSのマインドを世界に広げる活動をこれからも続けていきたい」と中川氏は希望を語った。
講演後のパネルディスカッションでは、全講演者が再登壇し、サービスの変革に取り組み、成功している製造業の各社から克服してきた苦労点、これから取り組む企業に向けて、講演では語りきれなかったポイントについてのディスカッションが行われた。
