中国「越境EC」、業界大手が軒並み業績悪化の事情 アマゾンの「アカウント大量閉鎖」などが打撃に

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中国の越境EC業者は、アマゾンなどのECプラットフォームを足場に急成長を遂げたが……(写真はアカウント閉鎖の打撃を受けた沢宝集団のウェブサイトより)

中国には、アメリカのアマゾン・ドット・コムやイーベイなど海外のEC(電子商取引)プラットフォーム上で自社ブランド商品を販売する「越境EC業者」が数多くある。それらのうち、株式を上場している業界大手の2022年1~6月期決算が9月初旬に出そろった。

各社の決算報告書に目を通すと、業績が軒並み悪化している。なかには生き残りをかけて、事業規模の縮小に踏み切る企業もあるほどだ。

背景には、越境EC業者の主力市場であるアメリカやヨーロッパの需要低迷がある。アメリカでは7月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.5%上昇。CPI上昇率は15カ月連続で5%を超えた。ヨーロッパでは、ユーロ圏のCPI上昇率が8月は9.1%に達し、過去最高値を更新した。こうした急激なインフレが、欧米の消費者の購買意欲に冷水を浴びせている。

それだけではない。アマゾンや決済サービスのペイパルなどがコンプライアンス(法令順守)体制を強化していることも、一部の越境EC業者に打撃を与えている。例えばアマゾンは2021年5月から、規約違反を繰り返すアカウントの大量閉鎖に乗り出した。その影響を受け、深圳証券取引所に上場する天沢信息産業や星徽精密製造は業績が大きく悪化した。

(訳注:アマゾンのアカウント大量閉鎖の経緯は『米アマゾン、中国「越境EC」業者の不正対応を強化』を参照)

生き残りへ自主的な規模縮小も

天沢信息産業は、越境EC大手の有棵樹科技の親会社だ。同社の1~6月期の売上高は4億2300万元(約87億4299万円)と、前年同期比64%も減少。純損益は8393万元(約17億3475万円)の赤字だった。

とはいえ、天沢信息産業は前年同期に9億4900万元(約196億1488万円)の純損失を計上しており、損益面では改善したと言える。決算報告書によれば、これは(アマゾンなどの)ECプラットフォームの経営方針の変化や欧米市場の競争激化に対応するため、同社が自主的に事業規模を縮小した結果だという。

もう1社の星徽精密製造は、複数の家電ブランドを展開する沢宝集団の親会社だ。同社の1~6月期の売上高は12億5600万元(約259億6026万円)と、前年同期比48%減少。純損益は前年同期の8798万元(約18億1846万円)の黒字から、2138万元(約4億4190万円)の赤字に転落した。

本記事は「財新」の提供記事です

星徽精密製造の説明によれば、業績悪化はアマゾンのアカウント閉鎖の影響により、越境ECの売り上げが落ち込んだことが主因だ。1~6月期はアマゾン経由の売上高が前年同期比8割も縮小、総売上高に占めるアマゾンの比率は前年同期の87%から49%に低下した。

(財新記者:楊錦曦)
※原文の配信は9月8日

財新 Biz&Tech

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