秋登山を考えている人の「今年特有」の懸念事情 夏はコロナ禍要因による遭難続出で警戒モード

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八ヶ岳
秋の八ヶ岳(筆者撮影)

今年の夏山シーズンは、行動制限がなかったこともあり山岳遭難件数がコロナ禍以降最多を記録しそうだ。山梨県側から富士山に登った人は11万5025人(7月1日~9月10日)と昨年の1.8倍に膨れ上がった一方、富士山での遭難は、静岡県側だけで50件、51人となった(7月10日~9月10日)。

原因別では「疲労」が22人で最多、次は「病気」で13人。「転倒・滑落」は9人だった。磐梯山や会津駒ケ岳などがある福島県は、1月から8月末までの遭難件数56件58人で、死者は6人。8月だけで11件の遭難があった。遭難件数は前年比22件増で過去5年で最多だった。

人気の山がひしめく長野県での山岳遭難も多かった。7、8月の遭難件数は100件で、前年よりも12件多かった。遭難人数は110人で死者は6人(行方不明1人)。年齢別では60歳以上が51人(46.4%)で最多。次いで40-50代が40人(36.4%)となっている。40代以上の中高年が8割以上を占めている。

今シーズンの遭難の特徴について、長野県警山岳遭難救助隊長の岸本俊朗氏はこう分析している。

「中高年齢層を中心に、下山中の転倒のほか、疲労、病気、道迷い等、事前の準備不足や体力・技量不足等に起因する遭難が多発しました。遭難者全体のうち、無事救出者の人数が負傷者を上回り過去5年で最多となっています。今シーズンは日数を要する縦走よりも1泊もしくは日帰りで山頂を往復できる山域やコースが好まれ、結果として体力や集中力が低下しやすい下山中の転倒(36%)や行動中の疲労、病気遭難(30%)が増加し、滑落(14%)が減少したと思われます。滑落が減少したことで死者数も減少しています」

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