「習近平3期目」地ならしに向けた凄惨な権力闘争 証拠をでっち上げて、邪魔者を政治的に暗殺

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中国では凄まじい権力闘争が繰り広げられている(写真:ブルームバーグ)
習近平国家主席は、10月に開催される第20回党大会で、異例の3期目へ向けた体制を固めると見られている。この「異例」を実現するために、裏でどのような権力闘争が行われていたのか。一時はビジネスで大成功を収めたものの、習体制下の権力闘争に巻き込まれて海外に逃避した中国人起業家のデズモンド・シャムの著書『私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット――中国の富・権力・腐敗・報復の内幕』の一部を再編集、権力者たちの暗闘をお伝えする。

習近平の反腐敗キャンペーンが実際に始まってみると、それは不正行為の撲滅のためというより、潜在的ライバルを葬るためだったことがわかった。習近平は、同じ太子党(中国共産党高級幹部の子弟)である薄熙来(元・中央政治局委員兼重慶市党委員会書記)の拘束に、すでに一役買っている。

続いて、中央政治局常務委員会で薄熙来の仲間だった周永康を投獄した。そのあとは方向を変え、今度は、共産党体制のもう一つの派閥である共産主義青年団派(団派)の壊滅に狙いを定めた。

団派は、習近平の前任の党総書記、胡錦濤に率いられてきた。胡錦濤の右腕で、私がレーシングカーを貸したことがある令谷の父親、令計劃は、2012年の終わりに胡錦濤が引退したとき、彼に代わって団派の顔になるはずだった。

実力者に近づく

令計劃は、党中央委員会中央弁公庁の主任、つまり1990年代の初めに温家宝(元・国務院総理)が務めたのと同じ「首席太監」として胡錦濤に仕えてきた。2012年11月に胡錦濤が退任したときには、中央政治局に入り、おそらく常務委員に昇進するものと見られていた。

温家宝が引退したときに備えて常に計画を立てていたホイットニー(著者の元妻、ビジネスパートナー)は、令計劃を籠絡することに強い関心を持ち、彼の家族と親しくなろうとした。彼女は私を令谷の指導役にし、自分は、令計劃の妻、谷麗萍と友だちになった。

当時、谷麗萍は、若い起業家に資金を提供する、共産主義青年団の慈善団体「中国青年創業国際計画」を創設し、総幹事を務めていた。ホイットニーは、谷麗萍と夫の令計劃が、いつか彼女のチェス盤の駒として動いてくれるという思惑で、その団体に数百万ドルを寄付した。

そこに悲劇は起きた。2012年3月18日の未明、令計劃と谷麗萍の息子、令谷は、自分のマンションから1.6キロほどのところで、フェラーリ458スパイダーを運転中にスピンし、コントロールを失って激突した。令谷と、同乗していた2人の女性が死亡し、3人は裸に近い格好で発見された。

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