「イカゲーム」エミー賞に見るアジア作品の可能性 純粋な作品勝負の時代、出遅れ日本にも挽回の道

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また、助演女優部門(ドラマシリーズ)に候補入りしたチョン・ホヨンも、次にジョー・タルボット監督の映画『The Governess』でリリー・ローズ・デップと共演する。『イカゲーム』のこの共演者ふたりは、今回のエミー賞で並んでプレゼンターも務めており、ハリウッドの一員としてすっかり自信がついた様子だ。

いずれにせよ、『パラサイト 半地下の家族』と『イカゲーム』の立て続けの快挙は、エンタメ業界がすでに新しい時代に入っているということを見せつけたものだと言える。ここ7年ほどの間、ハリウッドでは、オスカー候補者が白人だらけだとの批判を受けたアカデミーが先頭に立つ形で、多様性への努力を続けてきた。アクション映画でもっと女性を活躍させたり、女性の監督を起用したり、主要キャストに有色人種を入れたりなど、さまざまなところで配慮がなされている。

このエミー賞授賞式でも、司会の黒人コメディアン、キーナン・トンプソンが、『メディア王〜華麗なる一族〜』のキャストに多様性がないことをジョークのネタにしていた。今や、真っ白だと必ず何か言われるご時世なのだ。

面白ければ人種は問われない

だが、そんな「お説教」は、結局のところ、不要だったのである。出演者がどんな人種であれ、作品が面白ければ観られるのだということを、『イカゲーム』は証明した。そもそも、過去にハリウッドが作るものが真っ白だったのは、作り手が白人だらけで、観る人も自分たちと同じように白人が出てくるものを観たいはずだと決めつけていたからだった。

黒人が出演する映画が作られても、それらは「黒人観客向け」と位置付けされ、アジア系が主要キャストを務める映画は、まったくと言っていいほど作られなかった。そこへ4年前の2018年、『クレイジー・リッチ!』がアジア系以外の観客も呼びこんで、アメリカで大ヒット。そして2019年に『パラサイト 半地下の家族』、2021年に『イカゲーム』がやって来て、その説は覆されたのである。

『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞作品賞を受賞した時、その理由として、アカデミー自体が多様化を進め、投票者に外国人が増えたことがよく挙げられた。筆者も当時そう述べたし、今もそれが間違っていたとは思わない。

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