中国鉄鋼業界に原料高と需要減のダブルパンチ 「宝山鋼鉄」は1~6月期決算で純利益が半減

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中国の鉄鋼業界の景気サイクルは下降局面にさしかかっている。写真は宝山鋼鉄の熱間圧延ライン(同社ウェブサイトより)

中国の鉄鋼業界が、原材料の大幅な値上がりと需要縮小のダブルパンチに見舞われている。

上場大手の宝山鋼鉄が8月30日に発表した2022年1~6月期の半期決算では、売上高が1836億6000万元(約3兆6815億円)と前年同期比0.2%の微増だった一方、純利益は77億9000万元(約1562億円)と前年同期のほぼ半分に落ち込んだ。

同社は世界最大の鉄鋼企業グループ、中国宝武鋼鉄集団の中核上場子会社だ。純利益半減の要因について宝山鋼鉄は、石炭や合金など鉄鋼生産に欠かせない原料や副原料が大幅に値上がりしたことや、コストアップを鉄鋼製品の販売価格に転嫁しきれなかったことを挙げた。

さらに、1~6月期は新型コロナウイルスの局地的流行が中国各地で頻発した影響で、自動車メーカーや建設機械メーカーなどの(大口顧客の)需要がおしなべて減少したことも、業績に響いたとしている。

上場鉄鋼メーカーの3分の2が減益

「利益の大半を原料炭やコークスの値上がりに持っていかれた」。宝山鋼鉄の独立董事(社外取締役に相当)を務める謝栄氏は、8月31日に開催された決算説明会でそう釈明した。

中国の鉄鋼業界の景気サイクルは、2022年に入って下降局面にさしかかっている。(ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに)世界経済の先行き不安が高まったことに加えて、中国国内では新型コロナの局地的流行が反復し、製造業のサプライチェーンが川上から川下に至るまで混乱した。

それらの複雑な影響が積み重なった結果、鉄鋼メーカーの生産コストが高止まりする一方、顧客の需要は後退。利ザヤの縮小により、鉄鋼業界全体の経営状況が大きく悪化している。

本記事は「財新」の提供記事です

中国の鉄鋼業界向け情報サイト、我的鋼鉄(マイスチール・ドットコム)のデータによれば、8月30日までに合計37社の上場鉄鋼メーカーが1~6月期の半期決算を開示した。

それらのうち、最終損益が前年同期より増加した企業は5社にとどまり、全体の3分の2の27社が減益だった。また、前年同期は黒字だった4社が赤字に転落し、もともと赤字だった1社は損失がさらに拡大した。

(財新記者:施毅敏、羅国平)
※原文の配信は8月31日

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