意外に知らないがん治療「最前線の大変化」が凄い 医療の精密化で増える選択肢、患者が迷う場合も

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がんの治療法は大きく変わってきています(写真:mits/PIXTA)
かつては不治の病と言われることもあった「がん」ですが、「この数年のがん治療の変化は目覚ましいものがある」と指摘するのが、20年近く医療現場やがんサバイバーの取材を続けているノンフィクションライターの古川雅子氏です。『「気づき」のがん患者学 サバイバーに学ぶ治療と人生の選び方』を上梓した古川氏が、がん治療の最前線に迫りました。

HER2を標的にする治験薬の効果が持続する40歳男性

滋賀県に住む清水佳佑さん(40)は、2017年に肺腺がんと診断されました。その2カ月後、がんが肥大化して心臓の外側の心膜に達する合併症「がん性心膜炎」に陥り、ステージ4に進行。その後、清水さんは遺伝子を調べる検査を受け、「HER2(ハーツー)」という遺伝子に変異(遺伝子の変化)があることがわかりました。

3年半前からHER2を標的にする治療薬開発のための治験(国の承認を得るために安全性や有効性を確認する臨床試験)に参加し、今はその治験薬の効果が持続している、と清水さんはいいます。

「ただ、僕には副作用が強く出ていて働けない状況が続いています。仮に働くために副作用の少ない薬に切り替えたとしても、効かない薬ならば命が長く続かないかもしれない。お金と生活と治療の選択は、つねにせめぎ合いです」

清水さんは活動ができる短い期間に社会貢献活動などに参加しようと、副作用期・活動期を図示するカレンダーを作ろうと思いつきました。

デザインの仕事をしてきたこともあり、「ピクトグラム」を用いてカレンダーを作成し、日程調整のときなど相手に体調予測を知らせる工夫をしています。

●清水佳佑さん作成の体調表

清水佳佑さん作成の体調表
通院・投薬・副作用期・活動期など体調が一目でわかるよう、ピクトグラムで示されている(本人提供)

今は抗がん剤の副作用止めが改良され、副作用がほとんどないという人もいます。副作用の出方には大きく個人差があるのが現状です。もっと医療が“精密”になって、個人個人のタイプ別に副作用の出方も予測できるようになることを、清水さんは期待しています。

「今は障害年金のお世話になっていますが、副作用が少なくかつ効果が出る薬が出てきてそれに切り替えることができたら、自分はまた働けるようになり家族を養えるかもしれない。それが自分にとって一番いいシナリオです」

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