「住まいの暖かさと健康」の意外と侮れない関係性 断熱性に優れた家のほうが在宅ワークも捗る

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まずは、住まいの暖かさに関係する断熱について確認しておく。国の推計(2018年)では日本にある全住宅約5000万戸のうち、断熱性が低い住宅が7割弱[無断熱30%と1980(昭和55)年省エネ基準による37%の合計]を占めるとしている。

住宅ストック5000万戸の断熱性能

(出所:国土交通省資料)

一方、WHO(世界保健機関)では、SDGs(持続可能な開発目標)に関連して、「冬季の室温18℃以上」とすることを強く勧告しているが、その条件を満たす住まいは日本全国で1割に過ぎないという。

このような状況に危機感を持った国は、2014年から全国の医学・建築学などの研究者が参画し「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」を推進している。今回、筆者は同事業による「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」の結果の概要に触れる機会を得た。

これは住宅内部の温度と、血圧や脈拍などといった居住者の身体の状況の関係を検証した、日本では初めての科学的検証に基づくものとして明らかにしたものだ。

以下でその調査で判明した概要を紹介するが、一連の調査に参加した研究者の1人、伊香賀俊治・慶應義塾大学理工学部教授の成果発表に基づくものであることをあらかじめ記しておく。

明らかになってきた住まいの暖かさと健康の関係

さて、調査によると冬季の在宅中における居間の平均室温では、香川県が13.1℃で最下位(トップは北海道の19.8℃)になるなど、温暖とされる地域ほど居室の温度が低いという結果になった。

では、断熱改修をした住宅にはどのようないい効果があるのだろうか。改修後とそれ以前の住宅を比較したところ、前者では起床時の最高血圧を被験者の平均で3.1mmHg改善させる効果が見られた。改修は「内窓を設置する比較的簡単な工事によるもの」(伊香賀教授)という。

このほか、コレステロール値などの健康診断の結果や過活動膀胱(夜間の頻尿など)についても、改修後の暖かい住宅は改修前の住宅に比べて居住者の数値や回数が改善されていたとしている。

上下階・居室間の温度差が少ない住宅では、そうではない住宅と比べて糖尿病や高血圧症、糖質異常症の発症リスクが小さくなる可能性があることも、調査によって明らかになってきたと報告されている。

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