くら寿司の「100円ずし消滅」値上げに見えた死角 220円⇒165円へ値下げも進みコスト増は吸収可能?

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くら寿司から看板商品の「100円ずし」が消えるのは「よい値上げ」なのでしょうか?(東洋経済オンライン編集部撮影)

値上げラッシュのご時世です。庶民の味方で回転寿司業界大手のくら寿司でも、この10月から1皿110円(税込み)の定番商品を値上げすると発表しました。残念ながら創業当時から看板に掲げてきた「100円ずし」がこのタイミングで消滅します。

私は本業の経営戦略コンサルタントとして「2022年は値上げに成功した企業が勝つ」と言い続けています。くら寿司の今回の価格改定は成功するのでしょうか? 企業戦略の観点から分析してみます。

そもそもの前提ですが、足元の経済環境を考えるとどの企業も値上げを真剣に考えざるをえない状況となっています。昨年来続く小麦やとうもろこしなどの国際価格の高騰に加え、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにした原油価格の高騰とその経済制裁に伴う海産物や肥料の不足、そして足元で1ドル=144円台をつけた円安など値上げ要素に事欠くことがありません。

くら寿司の価格改定に見えた2つの特徴

これまでは原材料価格や光熱費が値上がりしても、それを企業努力で吸収して値上げをしないというやり方が成立したのですが、さすがにこの状況になるとコスト増に応じての価格増を実現しなければ企業はじり貧になるだけです。とはいえ値上げのやり方を間違えると好調な企業でも急速に顧客の支持を失ってしまうことがあります。

そこでくら寿司の価格改定は「よい値上げ」なのかそれとも「悪い値上げ」なのかを考えてみます。

さて、今回のくら寿司の価格改定には2つの特徴があります。ひとつはこれまで看板メニューに掲げてきた「100円ずし」税込み110円を115円に価格改定することです。そしてもうひとつはこれまでのワンランク上のメニューである税込み220円の皿を165円に値下げすることです。

実はこのニュースを聞いて最初に私が感じたことは、

「この価格改定を歓迎するくら寿司ファンは結構多いのではないか?」

ということでした。

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