DX時代に「見知らぬライバル」といかに戦うのか 「クリステンセン後」の新たなイノベーション論

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DX時代には、突然のゲームチェンジにも対応し、勝つための戦略が必要となります(写真:metamorworks/PIXTA)
現在、ビジネスの競争原理が変わりつつある。今までは明確に定義された業界が存在し、ライバル企業と同じ目的を持って、コストや品質で顧客をめぐって争っていた。しかし今は、より幅広い価値提案を行うエコシステム(生態系)の構築が重要視されてきている。
『イノベーションのジレンマ』で著名なクレイトン・クリステンセンは、同じ業界内でのディスラプション(破壊)による巨大企業の衰退のメカニズムを描いたが、今日では、見えないところからライバルがやってきて、いつの間にかゲームチェンジが起こってしまう。
さらに、DX化でこうした動きは加速化している。こうした時代を、企業はどのように戦い、生き抜いていくべきか。ダートマス大学教授で注目の経営学者であるロン・アドナーは、近著『エコシステム・ディスラプション』で正しく勝つための戦略を指南する。
本稿では、同書の監訳者であり、YouTubeチャンネル「中川先生のやさしいビジネス研究」でも著名な経営学者の中川功一氏が、本書から学べるDX時代の日本企業への示唆を語った。

誤ったゲームでの勝利は、敗北を意味する

この一文を見てピンと来た人は、この世界の本質というものをよく見抜いているといえるだろう。

『エコシステム・ディスラプション』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

私たちが取り返しのつかないミスをしてしまうのは、誤った道を全力で進んでしまったときだ。さながら月面地図を持って地球上を旅するようなもの。サッカーはパスを何本つなげるかという競技だと捉えていたならば、試合には絶対に勝つことはできない。

たとえば、任天堂はソニーと戦っていると捉えたならば、市場をごっそりとスマートフォンゲームに取られてしまうだろう。成功のカギは「正しいゲームに勝つ」ことである。

思えば近年、日本企業が手痛い敗北を喫した事例の多くは、「間違ったゲームをプレーしてしまった」ことに原因があるのではないだろうか。

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