東大調査報告書で考える「成功者による差別」の芽 他人にきつく「自己責任論」をふりかざすのは誰か

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差別に無自覚なエリートはいかにして生まれるのでしょうか(写真:ニングル / PIXTA)

筆者が、中学受験関連で母親たちに取材していたときのこと。

「成績優秀な小学生の子」を持つ母親たちが、“ある現象”について口にするのを聞いた。

「成績が上がってきた(自分の子どもが)御三家に行くんだとか言い出した」
「いちばん難しい学校を受けたいと本人が言っている」

その学校を見に行ったこともなければ、親が目指すように言っているわけでもないのに。

塾に行っていると、点数を上げること、順位を上げること、偏差値を上げることにモチベーションが向かい、自然と偏差値の高い学校を目指すようになるということらしい。

勉強ができる子の中には、学校ではそのことを評価してもらえず、「塾ならば(成果を出せば)褒められるから、楽しい」という子もいる。そうしたわが子の姿を見て喜ぶ親もいるが、しかし、点数や偏差値ばかりを追い求める環境で多感な時期を過ごすことの弊害はないのだろうか

総長の祝辞から見えること

国内における偏差値競争の“最たる行く先”ともいえる東京大学は、最近ダイバーシティ&インクルージョン宣言を発出した。

その背景として、点数や偏差値至上主義で競争してきた人たちによるコミュニティでは、マイノリティへの想像力を欠いた言動がまかりとおりがちであること。そしてそのような環境を当たり前だと思っている若い世代が社会に輩出され、社会に蔓延する偏見や無配慮を再生産してしまうこと。これらが問題視されはじめている(※1)。

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