五輪不正疑惑のAOKI、間際に相次いだ「唐突人事」 逮捕直前に創業者や事業会社社長が突如退任

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AOKIが手がけた2020年東京五輪の日本代表選手団の公式服
2021年に開催された東京五輪・パラリンピックでAOKIが作製した日本代表選手団の公式服装。五輪の開催と合わせて、一部店舗で展示が行われた(撮影:尾形文繁)

東京五輪の公式スーツを手がけた実績は、汚職事件の烙印に変わってしまうのか。

世間に衝撃をもたらした、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会元理事とAOKIホールディングス(HD)の汚職疑惑。騒動が明るみに出る前の2022年5月、紳士服業界はとある人事の話題で持ちきりだった。

その人事とは、AOKIHDが5月12日に発表したもの。6月29日の株主総会をもって、創業者で会長である青木拡憲氏(83)と、弟で副会長の青木寶久氏(76)がそろって退任し、拡憲氏の次男で、同社社長の青木彰宏氏(52)が会長に就任するという内容だった。

オーナー色が強く残る紳士服大手4社の中でも、業界2位のAOKIHDは唯一、創業者がいまだ現役で舵取りしていた会社だ。創業期から支えてきた弟・寶久氏との“兄弟オーナーシップ”で、社内外に絶大な影響力を発揮してきた。

紳士服市場が縮小する中、AOKIHDは拡憲氏のトップダウンにより、結婚式場「アニヴェルセル」や複合カフェ「快活CLUB」などの事業多角化へいち早く舵を切った。現在は売上高の4割超を紳士服以外で稼ぐ。業界内で抜きん出た多角化経営は、株式市場からも一定の評価を受けてきた。

交代の目的は「組織の若返り」

「スピード感のある経営判断は、拡憲氏が現役だからこそ」。そうした認識があった競合の紳士服大手の幹部らは、突然の退任の発表に驚いた。さらに業界関係者をざわつかせたのが、彰宏氏の後任となる社長の人事だ。

新社長に就いた東英和氏(57)は、AOKIHDが2005年に吸収合併した名古屋地盤の紳士服チェーン「トリイ」の出身。直近まで、グループ傘下の快活CLUB運営会社の社長を務めていた。

創業家以外の社長就任は同社初のことだ。当時、AOKIHDの幹部は「目的は組織の若返りのため。プロパー以外の社員が社長に就くことにも違和感はない」と説明していた。

それから3カ月が経ち、事態は思わぬ展開を迎えた。東京五輪・パラのスポンサー契約やライセンス商品の製造・販売をめぐり、大会組織委員会の元理事に賄賂を渡した疑いで、拡憲氏や寶久氏らAOKI関係者3人が逮捕されたのだ。

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