「戦場と民間の接近」ウクライナ侵攻が示した側面 技術革新に伴う様々な変化が今後も世界に広がる

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ウクライナのキエフで、独立記念日の前にフレシチャーティク通りにある反戦の壁画を通り過ぎる歩行者
技術が変える戦争と民間の距離をロシア・ウクライナ戦争の経緯から考えます(写真:Julia-Kochetova/Bloomberg)

技術が戦争を変える、というのは使い古された言葉だが、われわれはロシア・ウクライナ戦争からどのような変化を読み取ることができるだろうか。

この戦争では、ドローンや衛星情報の活用、サイバー攻撃といった21世紀型の比較的新しい要素が観察される一方、同時に重火器による都市包囲や空挺部隊による占領作戦の実施など、20世紀型の技術や作戦が展開されるという状況が生じている。むろん、「軍事における革命(RMA)」をめぐる議論の火つけ役となった1991年の湾岸戦争においてすら見られるように、ひとつの戦争に新旧技術が混在することは珍しいことではない。

技術を通じた民間の戦争「参加」

そうしたなか、今日の戦争に技術が与えた注目すべき影響として、戦場と民間の接近ということが挙げられる。これは今日の技術革新の特徴――民間セクターにおける新興技術の普遍的(omnipresent)な広がり――とも深くかかわっている。

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たとえば、ウクライナ政府はアメリカのスペースX社から衛星インターネットサービス(Starlink)の提供を受け、ドローンの運用に活用している。ドローンの運用自体は必ずしも新しい戦争のあり方とは言えないものの、その運用基盤を海外民間企業から直接得たというのは特筆すべき点のひとつであろう。

イーロン・マスクのような特定の「突出した」力を持つ人々だけでなく、より多くの「普通の人々」が戦争にタイムリーに参加できるような環境が生まれていることも無視しえない。

2022年2月末の戦争開始直後、ウクライナのフェドロフデジタル化担当相はTwitterをつうじて=不特定多数の一般人に向けてロシアに対してサイバー攻撃の一種であるDDoS攻撃を促すメッセージを発信した。これを受けて、匿名ハッカー集団「アノニマス(Anonymous)」のような専門家集団だけでなく、不特定多数の個人によるロシアへの攻撃も行われたとされる。

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