日本も無視できぬ「ウクライナ代理出産」深刻問題 新型コロナとロシアの侵攻で子を引き取れない

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代理出産で誕生した子と看護師
ウクライナのキーウで代理出産によって誕生した子の世話をする看護師(写真:Anastasia Vlasova/Getty Images)
日本人のカップルがウクライナ女性に「代理出産」を依頼し、すでに60人以上の子どもが生まれている――。その実態は前編で報告した。ただ、ウクライナでの代理出産にはさまざまな問題もある。もちろん、それらは同国に限っての話ではない。どうしても子どもがほしいというカップルの望みをかなえる可能性のある代理出産。そこには、どんな問題が潜んでいるのか。
代理出産の実情を伝えるリポートの後編は、新型コロナウイルスの流行とロシアとの戦争によって生まれた子どもを引き取ることが難しくなっている現状を報告し、代理出産の課題を考える。
前編:なぜウクライナで代理出産?選んだ日本人の葛藤

ウクライナでの代理出産に関する海外の報道などを調べてみると、ウクライナで代理母が出産してくれたにもかかわらず、子どものパスポートが発給されず、同国で足止めされたというケースが複数報告されている。

なぜ、そんなことが起きるのか。

代理出産を合法とするウクライナでは、依頼者に親権があるが、依頼者の国では代理出産によって子どもが生まれた場合、依頼者をその親と認めないことがある。このため依頼者の国のパスポートが子どもに発給されなかったというケースが出てくる。

ウクライナが注目を集めるようになったワケ

海外での代理出産で最も多いのが、赤ちゃんと代理母、依頼者カップルの3者をめぐる法的地位の問題だ。

誰が子どもの親なのかをめぐって、法廷で争われたこともある。タレントの向井亜紀さんがアメリカ人に代理出産を依頼して双子を得たケースでは、生まれた子どもを「実子」として出生届を出したが、受理されなかったため、不受理の取り消しを求める裁判を起こした。最高裁は2007年、不受理を認める決定を出した。結局、向井さん夫婦と子どもたちは特別養子縁組による「法的な親子」を選択せざるをえなかった。

2008年には「マンジちゃん事件」と呼ばれる出来事があった。インドで日本人夫婦の依頼によって子どもが生まれたが、夫婦が離婚し、子どもは無国籍状態となったケースだ。

赤ちゃんは現地で「マンジ」と名付けられ、世界で大きく報じられたことから、記憶している方がいるかもしれない。このケースでは子どもは特例として亡命者の扱いで日本に入国し、夫とその母(子どもの祖母)に引き取られた。

2014年にはタイで日本人の独身男性が代理出産によって十数人の子どもをもうけていたことが発覚した。これらがきっかけとなって、インドとタイでは代理出産に関する規制が強化され、外国人が代理出産することは難しくなった。

こうした結果、注目を集めるようになったのがウクライナだった。

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