なぜアメリカ人だけが「小切手」を使い続けるのか 国によって好まれる決済方法が変わる理由

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暗号資産を生み出したアメリカで、今も古風な小切手が使われているのはなぜなのでしょうか(写真:h&m/PIXTA)
アメリカの映画や小説には、小切手で決済する場面がよく登場する。しかし日本では、小切手で決済をしたことがある人はかなり限られている。それもそのはず、実は小切手全体の4分の3がアメリカで切られているからだ。カード決済を生み出し、暗号資産を生み出したアメリカで、今も古風な小切手が使われているのはなぜか。決済オタクであり、SWIFT(国際銀行間通信協会)の元CEOでもあるゴットフリート・レイブラントの新刊『教養としての決済』(ナターシャ・デ・テランとの共著)から、日本人にはあまりなじみがない「小切手」と決済の謎を紹介する。

1人当たり1週間に1枚の計算

最古の決済方法のひとつである小切手は、ダメージを受けやすく、面倒で、遅い。そして、その有効性にはタイムリミットがある。小切手は、現金の欠点はたくさんもっているが、即時性、確実性、匿名性、普遍性といった現金の利点はどれももっていない。

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あなたが小切手で支払いをするとき、受け取った相手は小切手を自分の銀行にもっていくか送るかする必要があり、そこから小切手はあなたの銀行に戻らなければならない。それから、決済される必要がある。受け取り手が小切手を長くもちすぎていなければ、小切手の状態がよければ、宛名が正しければ、そして支払人の口座に資金があれば、ようやく支払いを受けることができる。

うんざりするほど多くの「れば」(if)があるのだ。

しかし、それでもアメリカ人は、カードを使えばずっと簡単に済むにもかかわらず、いまだにレジで小切手を切っている。アメリカ以外の国ではほぼどこでも、いまや銀行口座振替が主流であるが、アメリカ人はいまだに請求書の支払いに小切手を使っている。アメリカでは毎年およそ150億枚の小切手が切られている──アメリカ人1人当たり1週間に1枚の計算になる。

アメリカ人はなぜこれほど多くの小切手を切るのだろうか?

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