学校が「サービス業化」教師が直面する受難の正体 ペアレントクラシーのもとで起きていること

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職員室の前に立つ女性
ペアレントクラシー化が進む社会の実相と、新自由主義的色合いを強める教育現場の実態をご紹介します(写真:Ushico/PIXTA)
“親ガチャ”というネットスラングに象徴されるように、日本は親の影響力が強い社会となりつつあり、生まれた家庭によって大きな格差が生じるようになっている。親の経済力と子どもの学力の相関関係は年々高まり、教育の場が階層固定の装置となる懸念も生じている。大阪大学大学院教授で、教育社会学を専門とする志水宏吉氏の著書『ペアレントクラシー 「親格差時代」の衝撃』より、ペアレントクラシー(親の影響力が強い社会)化が進む社会の実相と、新自由主義的色合いを強める教育現場の実態を紹介する。
前々回:『「親の力で人生が決まる」日本の決定的な転換点
前回:『公立なのに学校ごとの「学力格差」広がる根本理由

保護者対応に苦しめられる教師

「モンスターペアレント」という言葉を耳にしたことがあるに違いない。この言葉は、元小学校教師の向山洋一の命名によるもので、「学校などに対して、自己中心的かつ理不尽な要求をする親」のことである。

2000年代に入ってから使われるようになった言葉である。同様の概念を指す言葉として、アメリカには「ヘリコプターペアレント」という用語がある。子どもの上空を旋回してつねに気を配り、不利なことがあれば急降下して学校にさまざまな要求を出すという意味らしい。

保護者対応研究の第一人者である小野田正利は、保護者から学校へのクレームには、3段階があるという。当然受け止めるべき「要望」、事情によって対応すべき「苦情」、そして当事者の努力によってはいかんともしがたい「無理難題要求」(=イチャモン)である。

増大する保護者からの要望・苦情・無理難題要求について学校は、どう受け止め、対応すればよいのか。例えば、前節で挙げた、何の根拠もなく「うちの子どもは悪くない、悪いのはまわりの子たちだ」と主張する保護者に対していかなる行動をとればよいのか。それが、保護者対応である。

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