「東京駅舎の赤いタイル」復原した男のすごい人生 担当には早稲田大学大隈講堂など名建築がズラリ

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タイルの歴史に魅了され、拡散の歴史を追いかける旅が趣味の後藤さんの人生とは?(写真:筆者撮影)
この連載では、社業を極める「オタク」たちに焦点を当てている。そこに仕事を楽しむためのヒントがあると思うからだ。
今回インタビューしたのは後藤泰男さん。1985年に伊奈製陶(後にINAX、現LIXIL)に入社した。彼は“タイルの歴史”オタクだという。
キッカケは世界最古のタイルを研究したこと。すっかり魅了され、エジプト、イスラム、モロッコと拡散の歴史を追いかける旅が趣味になった。仕事では、東京駅丸の内駅舎、東京中央郵便局などの復原事業に携わっていくことになる。
復原は利益が出にくい事業で反対されることも多いという。東京駅復原での苦労話から、やりたいと思ったことを会社で実現するための仕事哲学を聞いた。
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東京駅に蘇った「明るい赤レンガ」の秘密

まず「タイルとは何か」を説明しておきたい。定義をいうなら「建物の壁や床を覆う薄い板状の焼きもののこと」である。

東京駅丸の内駅舎はもともと鉄骨レンガ造りの構造体の表面に“化粧レンガ”という薄いレンガが貼られていた。この化粧レンガもタイルなのである。

東京駅復原は巨大なプロジェクトであるため、相当数の人が関わっている。後藤さんはそのうちの“1人の演者”にすぎない。ただ、この東京駅は関わった人の数だけドラマがあるように思う。“タイル”という1つのマニアックな視点から見た物語を聞いていこう。

東京駅丸の内駅舎・太平洋戦争で失った3階部分を復原し創建当時の姿に戻した(写真:J6HQL/PIXTA)

──東京駅は2012年に工事が完了し創建当時の立派な姿に戻りました。1~2階はできる限り保存し、戦争で焼けてしまった3階部分を復原しています。ここに使われているのがLIXILの化粧レンガです。どんな経緯で発注があったのでしょうか。

2003年に見本焼きの条件が書かれた指示書が業界団体向けに発信されました。ここから全国のタイル業者が名乗りをあげることになります。色・テクスチャー・吸水率などが指定されていました。しかし最初の2年間はうまく焼けませんでした。理由は明確で“色”です。

次ページ東京駅の明るい赤は、どうやっても再現できない?!
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