大家が親に連絡も「LGBTQや高齢者」家借りる困難 拡大する日本の住宅弱者問題の現在地

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高齢者や低所得者、シングルマザー、LGBTQなど住宅確保要配慮者が家を借りる環境は改善しているのか(写真:cba/PIXTA)

2017年に国は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(住宅セーフティネット法)を改正した。これは高齢者、子育て世帯、低所得者、障害者、被災者など、いわゆる住宅確保要配慮者が入居しやすい賃貸住宅の供給促進を図るもの。それから5年。コロナ禍で収入が減少した世帯の増加、LGBTQへの認知度の向上などから住宅の借りにくさは逆に広がっているようにも思われる。現状を聞いた。

借りにくさは誰が主体かによって問題が異なる

住宅の借りにくさは、誰が主体であるかによって問題のあり方が異なる。所得の問題はどの層にもほぼ共通するが、高齢者の場合には孤独死が起きたり、認知症になることが問題とされ、身体に障害がある場合には建物のハードが課題となることがあり、シングルマザーであれば子育てが絡む。1つの施策で解決が図りにくいのである。順に見ていこう。

まずは高齢者。賃貸居住を阻む問題は所得を別にすると孤独死が事故物件扱いになること、認知症になるなど入居者の状態の変化による近隣トラブルの大きく2つとされる。孤独死に関しては亡くなった後に残された残置物の処理、賃貸借契約の解除、孤独死があったことを理由に次の募集時に家賃が下がるという3点が課題とされる。

そのうち、残置物、契約解除の対策として国は2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を定めている。賃貸借権は相続されるため、これまでは相続人を探して賃貸借契約を解除、残置物の処理等を依頼しなければならなかった。事前にモデル契約条項を利用して死後の事務を委任しておけば、従前に比べ時間や手間をかけずに契約解除などができるようにしたのである。

2021年10月には新たなガイドライン(*1)を策定し、老衰や病死などの自然死は売買、賃貸とも原則は取引相手に告知しなくてもよいことが示された。これにより、孤独死があっても事故物件になる物件を減らし、孤独死を避けたいがために貸さないという例を減らそうというわけである。

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