フランス発「貧しい市民の革命運動」は広がるか 左派政治家メランションが挑む弱者救済の政治

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2022年6月、選挙戦で演説するメランション氏(写真・ 2022 Bloomberg Finance LP)

2022年6月下旬、ドイツのエルマウでG7サミットが開催された。しかし、奇妙だったのはこれらの国の大統領や首相が、今ではほとんど自国の国民の支持を受けていないことであった。民主政治である以上、支持率が下がるのはやむをえない。しかし、ウクライナで戦争が起きている状態でのG7首脳の判断は大きな影響力を持つ。

G7サミットの後、イギリスのボリス・ジョンソン首相はスキャンダル問題で辞任し、カナダのジャスティン・トルドー首相もスキャンダルで苦労している。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2022年6月の議会選挙で多数派を取れず、エリザベッド・ボルヌ首相を継続させているが、議会の信頼を得られるような状態にはない。イタリアのマリオ・ドラギ首相も、支持政党の支持を得られず辞任してしまった。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ロシアからのエネルギーを切られ、緑の党との確執も出てきた。比較的安泰なのは日本ぐらいであるが、その日本の岸田文雄首相も、彼を支持する安倍晋三元首相の死によって先行きに不安が出ている。そして、肝心なアメリカのジョー・バイデン大統領の支持率も急落しているというのだ。

「ヨーロッパはアメリカの利益に動かされている」

その後、日本を除くG6はスペインのマドリードでNATO(北大西洋条約機構)の会議を行ったが、ここでもウクライナの戦況の悪さ、さらなる強硬な戦争支持が、民衆の生活をインフレとエネルギー不足に追い込み、NATOの政策に民衆の批判が相次ぎ、デモが広がった。スペイン議会で左派のヘラルド・ピサレージョ議員が語った言葉は、正鵠を得ている。彼はこう述べたのだ。ヨーロッパはアメリカの意志で動いていて、独自の判断を持っていない。しかもその意志が、武器産業によるアメリカの利益に動かされているのだと。

NATOの首脳、とりわけEUの首脳がこうしたロビイストに動かされているとすれば、EUの首脳は軍需産業のあやつり人形だということになる。まして、その首脳の多くが国民の支持を得ていないというのだから、なおさらことは重大だ。

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