戦争の「出口戦略」で決断迫られるプーチン大統領 どこまで制圧すれば「勝利」かをめぐり政権内で対立

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アメリカがウクライナ軍に供給したM142高機動ロケット砲システム、略称ハイマース(写真・AFP=時事)

開始から5カ月が過ぎたウクライナ侵攻。東部制圧作戦を展開しているロシア軍の攻勢に、ペースダウンの兆候が見え始めている。同時にアメリカやヨーロッパから高性能兵器の供与が本格化する中、ウクライナ軍が南部で反攻に向けた動きを見せ始めるなど、膠着していた戦況に変化の兆しが出ている。

このような状況でクレムリン内部では、侵攻の出口戦略をめぐり2つの高官グループ間で意見対立が起きているとの観測が強まっている。両グループからの進言を受けてプーチン氏がどのような決断を行うのか。これが今後の戦争の行方を大きく左右することになりそうだ。

一方で、侵攻が膠着状態のまま長期戦に陥ることを避けるため、ウクライナが一定の軍事的勝利を収められるよう、米欧がより踏み込んだ大規模軍事支援を行う新戦略に舵を切ったこともわかった。

「早期終結派」と「戦線拡大派」の対立

クレムリン内の2つの高官グループは、大まかに戦争の「早期終結派」と「戦線拡大派」に分類できる。

前者の主張は、このようなものだ。現在ロシア軍は掌握済みの東部ルガンスク州に加えて、隣のドネツク州の攻略を急いでいるが、両州を合わせた、いわいるドンバス地方全体を制圧することをもって作戦を終了して「戦勝」を宣言する。さらに、すでにほとんどを占領した南部ヘルソン州の一部から撤退して、ウクライナ側に一定の「善意」を示すというものだ。この善意とは、侵攻終結後のウクライナとの和平交渉を円滑に進めるための歩み寄りのメッセージを意図したものとみられる。

後者の「戦線拡大派」は、ドンバス地方制圧後も侵攻を継続し、ヘルソンはもちろん、オデーサ(オデッサ))、ザポリージャ(ザポロジェ)などの南部各州や東部ハリキウ(ハリコフ)州、さらにウクライナの隣国モルドバの占領を目指すというものだ。

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