人口196万の札幌、年約200件ヒグマ出没の危機感 新幹線延伸、冬季五輪誘致に沸く陰で人的被害

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大都市にヒグマがたびたび出没している(写真:まちゃー、gajinphoto/PIXTA)

7月中旬、札幌を訪れた。市内中心部は再開発ラッシュが進行中だ。2030年度に向けた北海道新幹線の札幌延伸や冬季五輪誘致をにらんで新たな商業施設、超高級ホテル、オフィスビルなどが続々と誕生することになる。

札幌の飛躍の転機となった冬季五輪から50年。市内のインフラは老朽化し、コロナ禍で訪日外国人の姿も消えた。人口も戦後初めて減少に転じた(2021年の人口動態=280人減)。7月1日時点の人口は196万2389人(住民基本台帳)となっている。

準備が進められるビアガーデン(筆者撮影、7月12日)

そんな北の都に再び光が差し始めている。7月31日には、2300人の市民を公募しての市制100周年記念式典が開催されるほか、大通り公園でのビアガーデンも復活。コロナ前は100万人以上の来場者を集めた一大イベントだけに、消費マインドを刺激しそうだ。

実際、今年に入って札幌・北海道の経済指標は復調傾向にある。道内の百貨店売り上げは3カ月連続、コンビニ売り上げは6カ月連続で前年を上回っている。7月17日には新千歳空港の国際定期便が2年4カ月ぶりに再開した。

2028年度には札幌駅南口に43階建て、高さ245メートルとなる道内一の高層ビルが竣工し、駅前の雰囲気が一変する。北海道新幹線札幌駅と直結し、マリオット・インターナショナルと提携した国際水準のホテルも入る。北海道新聞のサイトには「札幌再開発マップ」が掲載され、30以上の再開発計画が紹介されている。まさに大変貌の渦中にあるといっていい。

人口196万都市に年約200件のヒグマ出没

一方で気がかりな現象がある。ヒグマの出没件数の多さである。札幌市内におけるこの5年間の出没件数は、2017年度106件、18年度137件、19年度196件、20年度95件、21年度185件となっている。22年度は最新の目撃情報が寄せられた7月24日までで72件。この5年間で2番目に多かった昨年とほぼ同じペースだ。

かつてはヒグマの生息地である山間部が多い南区が圧倒的だったが、ここ数年は札幌市内10区すべてで出没。昨年はついに市街地(東区)で住民ら4人が負傷する事件まで発生した。人口200万人近い大都市で、年間185件ものヒグマ出没件数が確認されている。カナダのバンクーバーを除くと、おそらく世界的にも例がないのではないだろうか。

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