高卒男性を過重労働でボロボロにした企業の罪 残業は月200時間以上で、手取りは20万円だった

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初めて働いたスーパーで、異常な長時間労働といじめを経験したユウトさん。以来、正社員として働くことが怖くなってしまったという(写真:ユウトさん提供)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「過去に勤めた会社で度々パワハラを受けたり、同僚とのトラブルがあったりしました」と編集部にメールをくれた36歳の男性だ。

「太陽を見たことがなかった」

早朝4時に出勤し、帰るのは早くて午後9時。深夜、日付が変わる時刻になることもたびたびあった。昼食はサンドイッチやおにぎりといった手づかみできるものを15分で流し込む。繁忙期にはパイプ椅子を並べたり、床に段ボールを敷いたりして泊まり込んだ。毎月の残業は200時間を超えたが、手当がつくのは30時間だけ。手取り額は20万円ほどだった。

ユウトさん(仮名、36歳)が高校卒業後、初めて勤めた地元スーパーでの経験である。異常な働かされ方を「出退勤のときに太陽を見たことがありませんでした」と表現する。

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「湯船に入ったまま、まばたきしたつもりが気付くと(数時間が経過して)朝になっていたことが何度もありました。遅刻をしないよう、夜は靴下を履いてダウンコートを着て眠り、起きたら20秒で家を出られるようにしてました。始発電車に乗るために、降りている遮断機を無理やり上げて線路を渡ったこともあります。今思うと私も異常な状態でした」

このスーパーは地域に数十店舗を展開する地場企業。ユウトさんは正社員として採用され、鮮魚などを扱う部門に配属された。仕入れた魚をさばき、パック詰めした後は、商品の陳列や接客も任された。

上司の口癖は「休みたいとか、早く帰りたいとか、権利を主張するんだったら、まずは義務を果たせ」。義務とは売り上げ目標を達成すること。ユウトさんは「当時は上司の言っていることがおかしいということがわかりませんでした。高校では(労働関連法について)何も教えてくれませんでしたから」と振り返る。

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