原油・金属相場の反落で中国製造業の逆風緩む 41業種のうち20業種で5月の収益状況が改善

✎ 1〜 ✎ 978 ✎ 979 ✎ 980 ✎ 最新
拡大
縮小
鋼板など原材料の価格下落に伴い、需要家である製造業の業績改善に期待が高まっている(写真は中国の国有鉄鋼大手、河鋼集団のウェブサイトより)

原油や金属などのコモディティー相場が調整局面に入っている。原油価格の国際指標の1つであるWTI原油先物は、6月上旬に1バレル=120ドル(約1万6650円)台をつけた後に反落し、7月上旬には一時100ドル(約1万3870円)を割り込んだ。

世界経済のファンダメンタルズとより密接に連動する金属相場は、調整幅がさらに大きい。ロンドン金属取引所(LME)の銅先物相場は、3月につけた最高値から3割近く下落。アルミニウム先物は最高値から4割、ニッケル先物は同6割も値を下げている。

そんななか、コモディティーの需要家である製造業が直面していたコスト上昇圧力に、緩和の兆しはあるのだろうか。

華創証券のマクロ経済担当チーフアナリストを務める張瑜氏の分析によれば、製造業の利益はすでに5月から多くの業種で改善傾向を見せている。中国国家統計局の分類に基づく工業の41業種のうち、半分の20業種で5月の利益が前月より増加、または減少幅が縮小し、うち5業種では利益が減少から増加に転じた。

家電メーカーの増益傾向が鮮明に

招商証券のマクロ経済担当チーフアナリスト、張静静氏が率いるチームの分析によれば、製造業のサプライチェーンのなかで(よりエンドユーザーに近い)「川下」に位置する企業のほうが、「川上」の企業よりも明らかに好調だ。特に自動車、機械、医薬、食品などの各業界で、川中から川下にある企業の業績改善に期待が高まっているという。

本記事は「財新」の提供記事です

なかでも注目されるのが、家電メーカーの収益力の回復だ。製品の原材料である鉄や銅、樹脂などの調達コストが下がったうえ、人民元の対ドル為替レート下落の効果が加わり、2022年4~6月期は利益の増加傾向が鮮明になっている。

株式市場はすでにそれを織り込み始めている。例えば7月11日、中国のA株(人民元建て株式)は全体的に弱含んだが、家電セクターの株価は逆に強含みで推移した。この日、上海申銀万国証券が算出している大手家電メーカーの株価インデックスは前日比0.69%上昇。上海総合指数が同1.27%下落したのとは対照的だった。

(財新記者:王晶)
※原文の配信は7月11日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT