苦闘するアベノミクス「3つの変身」で見えた課題 議論百出の経済政策を今改めて検証する

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アベノミクスを柱とした衆院選公約を発表する安倍晋三首相(2012年11月)(撮影:尾形文繁)

8日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相は、経済面で賛否のある政策を展開してきた。それがアベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)だ。

議論百出の経済政策ともいえるが、政権発足以降の10年間で3つの「変身」が観察できた。それらについて今改めて検証したい。

金融政策から財政政策へ重点シフト

1つは金融政策から財政政策への重点シフトだ。日本銀行関係者によると、2018年3月、退任のあいさつで首相官邸を訪ねた中曽宏・日銀副総裁(当時)に対して安倍氏はこう言った。

「物価はもういいですよ」

このころの物価上昇率は1%に届くかどうかという水準。日銀関係者は「安倍さんは金融政策に関心を失ったのかなと思った」という。

その直後、首相官邸からインフレ目標2%の達成年限について、「毎回毎回、『見込みが外れた』とメディアに書かれるのはアベノミクスが失敗したみたいだ。何とかならないのか」との苦情が官邸から財務省に寄せられてきた。

日銀は四半期に一度発表する展望リポートで2%目標達成の時期を「2019年度ごろ」などと明記していたが、すでに6回にわたり延期を表明していた。財務省などは官邸の意向を日銀に伝え、2%達成の目標年次は2018年4月の展望リポート以降、削除されてしまった。

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