防衛費を「5年で倍増」はどのくらい現実的なのか 実現すれば米中に次ぐ、軍事大国に大きく変貌する

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(デザイン:小林由依/画像:アフロ)

「イエス」。今年5月、日米首脳会談後の記者会見に臨んだバイデン米大統領は、「台湾防衛に軍事的に関与する意思はあるか」との質問に即答した。米台断交後に米軍の台湾関与を言い切った米大統領は初めてで、東アジアにおいて中国の軍事的プレゼンスがいかに大きくなってきたかを示すものだ。

防衛力を5年以内に抜本的に強化する

首脳会談で岸田文雄首相は防衛費の「相当な増額」とともに、敵のミサイル基地をたたく長射程ミサイルなどの「敵基地攻撃(反撃)能力」の保有を検討していることを伝達した。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、覇権主義的な行動を取る中国への警戒感が日米両政府で急速に高まっている。

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今年6月に政府が決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」。外交・防衛分野では、これまでになく踏み込んだ表現になった。

NATO(北大西洋条約機構)加盟国で国防費をGDP比2%以上とする基準を満たすための努力がされていると紹介し、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と盛り込んだ。

現在の防衛費は5兆4000億円(2022年度の当初予算)で、GDP比で0.96%。GDP比2%に増額しようとすれば、あと5兆円を増やすことになる。実現すれば、世界で9位だった国防予算が米国、中国に次ぐ世界3位になる。

参院選の自民党公約では、「NATOの2%以上も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」とした。骨太の方針も公約も5年以内に倍増するとは直接的には書いていないが、そう解釈することができる書きぶりだ。

自民党内はすでに走り出している。党国防部会長の宮澤博行衆院議員は、「5年で2%達成が目標」と断言する。これまで期限を設けて防衛費の増額が論じられたことはほとんどなかっただけに、国防関係議員は勢いづく。

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