中国自動車産業を悩ます「半導体不足」の長期化 広州汽車集団では上半期16万台の減産要因に

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自動運転システムなどを搭載したスマートEVは、従来のエンジン車よりはるかに多数の半導体を搭載している。写真は広州汽車集団のEV生産ライン(同社ウェブサイトより)

中国の自動車産業で、車載用半導体の需給逼迫が続いている。

「半導体不足と新型コロナウイルス流行の影響により、2022年1~6月期に台数ベースで16万台、金額ベースで200億元(約4038億円)相当に上る減産を迫られた」。国有自動車大手の広州汽車集団の董事長(会長に相当)を務める曽慶洪氏は6月25日、広東省広州市で開催された業界向けフォーラムでそう発言した。

車載用半導体の不足が長期化している背景には、複数の要因がある。需要側の大きな要因の1つが、自動車の電動化やスマート化がもたらした半導体使用量の急増だ。曽氏によれば、1台のEV(電気自動車)に使われる半導体の数は従来のエンジン車の2倍以上であり、(自動運転システムなどを搭載した)スマートEVでは8~10倍に上るという。

一方、供給側の最大のボトルネックになっているのが、半導体業界で旧世代の製造プロセスの生産キャパシティーに限りがあることだ。広州汽車集団傘下の投資会社、広汽資本の総経理(社長に相当)を務める袁鋒氏は、実態を次のように解説した。

「いま足りないのは、例えばエヌビディアの自動運転向けプロセッサーのような最先端の製造プロセスを用いた半導体ではない。旧世代の成熟した製造プロセスで作られる一般的なチップなのだ」

車載用半導体の自給率は5%未満

ドイツ自動車部品大手のボッシュの中国地区総裁を務める陳玉東氏も、同じフォーラムで厳しい現状を打ち明けた。

「わが社のDCU(ドメイン制御ユニット)は、メーンのプロセッサーにクアルコムの『スナップドラゴン8155』などを採用している。だが、ユニットにはほかにも複数の半導体メーカーの80個以上のチップが組み込まれており、それらの1つでも足りなければ完成させられない」(陳氏)

(訳注:DCUは車両に搭載された多数の電子制御装置や各種センサー、自動運転システムなどを集中制御するユニット)

陳氏によれば、ボッシュのDCUは現時点では自動車メーカーの引き合いの3割強しか供給できていない。2022年後半にはそれを5~6割に引き上げられる見通しだが、同社にとって半導体不足が引き続き深刻な問題であることに変わりはない。

本記事は「財新」の提供記事です

冒頭の曽氏はフォーラムの席上で、車載用半導体の自給率の低さについても危機感を表した。市場調査会社のICインサイツのデータによれば、中国の車載用半導体の自給率は2021年時点では5%にも満たない。

「車載用半導体の供給の大部分を海外メーカーに依存していることは、中国自動車産業の持続可能な発展にとって潜在的なリスクだ」(曽氏)

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は6月27日

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