自死した17歳バレー部員、遺族が納得できない訳 暴言指導の顧問に処分は下るも、残った課題

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部活動での苦しみについて遺書を残し、17歳で命を絶った新谷翼さん。今なお遺族が納得できない理由とはーー(写真:筆者撮影)
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「先生からも怒られ、バレーボールも生きることも嫌になりました。ミスをしたらいちばん怒られ、必要ない、使えないと言われました」

「こんなことをしてしまって本当にごめんなさい。許して下さい」

そんな遺書を残し、2018年7月3日に岩手県立不来方高校バレーボール部に所属する新谷翼さん(当時17)が自死した問題。県教育委員会は6月24日、元顧問の男性教員A氏(45)を懲戒免職処分とした。処分決定まで、自死から実に4年かかった。

処分は、A氏が翼さんに「背は一番でかいのにプレーは一番下手」「脳みそ入ってんのか」などの言葉を浴びせ、他部員に対しても暴言があったことを重く見たものだ。

ただ、処分が決まったにもかかわらず、翼さんの父・聡さん(55)は悔しさをのぞかせる。

「今回の処分決定が、他の類似事案を発生させない抑止力になればと思います。ただ、自分としてはこれで一区切りついたわけではないです。まったくスッキリしていません」

「納得いかない」遺族が語るこれだけの理由

遺族の気持ちに区切りがつかないのは、A氏以外の主な管理職は処分がされていないからだ。翼さんの自死から4年がたち、彼らはすでに定年退職している。そのため行政処分の対象にならないのだ。責任を問われないまま、県内のスポーツ団体や教育現場で主要なポストを務め続けている。

「当時の学校長や教育委員会の方たちが正しい判断基準を持ち合わせていれば、翼が犠牲になることはなかったはずで、無念で仕方がありません。彼らが何の責任も負わないのは納得がいきません」

次ページ「暴言」による中高生の自死が軽く扱われる日本の実態
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