トヨタと日産・三菱自のEV、出足から分かれた明暗 個人向け振るわぬトヨタ、新販売方法で苦戦

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トヨタ「bZ4X」は、満充電時の航続可能距離は最大559kmを確保し、テスラなど競合他社と遜色ない。法人向けは好調なものの個人向けで苦戦している(記者撮影)

自動車各社から電気自動車(EV)の発売が相次いでいる。航続距離などの性能と価格のバランスや売り方について、手探りの状況が続く。ただ、出足は必ずしも好調とは言えないようだ。

トヨタ自動車が国内で5月12日に発売した新型EV「bZ4X」。同社初の量販EVとあって受注状況に注目が集まっている。トヨタは年内の納車が可能な第1期分として法人向けと個人向け合わせて3000台を設定したうえで、秋口に第2期の申込みを受付け、初年度は5000台分の生産・販売を予定していた。

個人向けが伸び悩むトヨタbZ4X

ただ、初期ロット3000台に対し、6月中旬時点の受注は約1700台に留まる。トヨタは現時点では詳細な受注状況を発表していないが、特に法人向けの引きが強いようだ。

トヨタレンタリース店を通じてリースで展開する法人向けは、トヨタ系販社社長によると、「当初の枠450台が受注開始1時間で埋まり、1000台に拡大した枠も数日で埋まった」という。KINTOの担当者は、「第1期分の3000台では法人向けと個人向けそれぞれの枠は設定していない」とする。

この販社社長は、「bZ4Xを社長車として注文するケースが多く、クラウンからの乗り換えも少なくない」とし、「レンタリース店はバンなど商用車の取り扱いが多く、買いたい人に売る体制にはなっていない」と指摘する。

一方、個人向けはサブスクリプション(定額課金)サービス「KINTO(キント)」に絞った形で展開しているが、「個人向けの受注台数は法人向けの7割ぐらいでは」(別の販社社長)。伸び悩んでいるのはなぜか。「月額利用料金や申込金(77万円)が高い」という費用面、そして「自己所有をしたいのにできない」という制度面が大きな理由だ。

キントは自動車税や車検費用、自動車保険などを含めた金額を一定期間中に月定額で支払い、契約期間が済むとその車を返却する仕組みだ。毎月の利用料を払ってbZ4Xを利用する。

車両本体価格600万円のタイプでは、月額利用料は当初4年間固定で8万8220円(国の補助金適用後)。5年目以降は毎年下がっていく。国の補助金の適用を受け、専用プランの最長期間である10年間サブスクを利用した場合は月額利用料の合計は約870万円だ。

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