コロナ療養中の英国看護師が訴える「憤りと不安」 「コロナと共存」選んだイギリスは正しいのか

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コロナと共存を打ち出したイギリス。医療現場で働く看護師が政策の方針転換に異論を唱えます(写真:Bongkarn Thanyakij/PIXTA)
2022年の幕開けから、ジョンソン首相は新型コロナに関する規制を次々と緩和し、2月には「コロナと共に生きる」と新しい計画を発表して、コロナ対策の法的規制が廃止された。
果たしてイギリスは計画通りにコロナと共存できるのだろうか? また、コロナとの共存の狭間から見える「イギリスが抱える闇」とは何か? イギリス正看護師、フリーランス医療通訳のピネガー由紀さんが報告する。

2022年1月、ジョンソン首相はコロナ陽性患者の自主隔離期間をそれまでの最短7日間から5日間に減らす指針を打ち出した。これは職場でコロナ関連による職員の欠勤で生じる、慢性的な人手不足を解消するのが目的だった。確かに、筆者の勤務先の病院も、通常業務に支障が出るほど深刻な職員不足を経験をした。

このほかにも、1月には在宅勤務の推奨がなくなって職場への出勤が国民に促され、校内や公共の場でのマスク着用義務が撤廃された。スーパーや公共交通機関などではたちまちマスクを外した人であふれかえった。

感染者の自主隔離の法的規制がなくなった

2月1日のイギリスの新規コロナ感染者数は11300人を記録していたため、規制緩和に不安を覚える声も上がったが、そんなことで怯むジョンソン首相ではない。21日には、冒頭のようにコロナとの共存計画が打ち出され、24日にはすべてのコロナ感染対策が規制撤廃となった。義務付けられていた教員や生徒の週2回の簡易検査(ラテラルフロー)の定期検査が廃止され、感染者の自主隔離の法的規制がなくなった。

4月1日からは、症状がある人の無料PCR検査や簡易検査も、一部の人を除いて廃止となった。高齢者や基礎疾患がある人、ハイリスク患者や医療介護業界や教育現場で働く人などには無料の検査キットが支給されたが、それ以外の人は検査不要に。今は、症状があるときのみ国から5日間の自主隔離の「勧告」を受ける。これが現在も残っている唯一の国の感染対策だ。

海外からの渡航者に関しては、ワクチン接種の有無に関係なく、一切の感染対策は廃止された。

では、病院はどんな状況になっているのだろう?

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