「エニタイム」会長が取締役会の決定覆す異常事態 大株主として強権発動し、独自に役員提案

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コロナ禍にもかかわらず、好業績を維持しているファストフィットネスジャパンだが、前代未聞の株主提案で大きく揺れている(記者撮影)

過半数の株式を握る現役オーナー会長が、取締役会の決定を覆す「株主提案」に打って出る。“ちゃぶ台返し”ともいえる異常事態だ。

「仮に本株主提案が可決される事態となれば、当社のコーポレート・ガバナンス体制は機能不全となり、株主の皆様には多大な損失を与えかねない」――。

株主総会の招集通知に“鬼気迫る”文言が並んだのは、東京証券取引所のプライム市場に上場するFast Fitness Japan(以下、ファストフィットネス)だ。同社は「24時間年中無休」をうたったアメリカ発祥の小型ジム「エニタイムフィットネス」の国内運営会社として急成長を遂げた。

そのファストフィットネスが今、前代未聞の株主提案で大きく揺れている。現役の取締役会長である大熊章氏と監査等委員を務める取締役の高嶋淳氏が結託し、自分たちを含めた取締役会で一度決定した会社側の提案を、資本の論理で強引に覆そうとしているからだ。

役員候補から外された高嶋氏

事の発端は2022年4月13日にさかのぼる。会社側のプレスリリースによれば、この日開催された指名報酬委員会において、株主総会に上程する取締役候補者案を決定。さらに、その翌日に開催した取締役会でも指名報酬委員会が決めた内容を追認している。通常であれば、この日の決定内容だけが6月23日の株主総会で提案されるはずだった。

ところが、取締役会の決定を経た後の4月25日に、大熊会長と高嶋氏らが連名で株主提案を提出した。現役の取締役会長が株主提案を行うこと自体が異例だが、経営者を監督する立場にある監査等委員が共同で提出していること、なによりその提案の中身が市場関係者の注目を集めている。

大熊会長らが提出した株主提案は、高嶋氏の再任と、高嶋氏の再任に反対した社外取締役の首をすげ替えるものだった。

なぜこのような株主提案を出すことになったのか。それは、ファストフィットネスの指名報酬委員会が4月の時点で現任の取締役監査等委員3人のうち1人を次年度の取締役候補にしないことを決定していたからだ。この候補から外された取締役が、高嶋氏だった。

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