トヨタ国内販売幹部交代、増える受注残に危機感 納期の長期化など背景に人事一新、疑問の声も

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部材調達難が響き、新型「ヴォクシー」のハイブリッド車は納車1年待ちだ(記者撮影)

「このタイミングでの本部長交代はまったく想定していなかった」。

6月15日にトヨタ自動車が発表した国内営業のトップ人事に衝撃が広がっている。2016年から国内販売事業本部長を務めてきた佐藤康彦氏(61)が退任し、友山茂樹氏(63)が7月1日付けで就任する。あるトヨタ系有力販社の社長は驚きを隠さなかった。

友山氏は「ジャスト・イン・タイム」に象徴されるトヨタ生産方式(TPS)やITのエキスパートだ。副社長や執行役員を経て、2021年1月からエグゼクティブフェローを務めている。1990年代後半には豊田章男社長が国内営業の課長時代に係長として一緒に販売店の改善作業に取り組むなど、豊田社長に近しい人物だ。一方、佐藤氏はトヨタのキャリアのほとんどを国内営業で積み、国内営業の顔とも言える存在だ。

国内販売担当の交代に2つの狙い

営業畑の幹部をすげ替える人事の狙いはふたつある。

まず、国内唯一のトヨタ系直営販売会社であるトヨタモビリティ東京(TMT)の立て直しだ。佐藤氏は現在TMTの会長を務めているが、6月24日の株主総会を経て、社長に就任する人事が内定している。現在社長を務める関島誠一氏は会長に退く。

TMTでは2021年7月、レクサス高輪店などで不正車検が発覚。対象となった522台では、排気ガスの成分やスピードメーターの精度について検査を実施していなかったうえ、パーキングブレーキの効きなどを調べる一部の検査で計測値を改ざんしていた。整備部門の人手不足に対し、経営陣が有効な手立てを打てていなかったことやコンプライアンス(法令順守)意識の欠如が原因とされた。

改善は喫緊の課題だが、TMTの成り立ちがそれを難しくしている。同社は2019年4月に東京地区の直営4販社と中間持株会社を統合して設立されたが、「主導権を巡る旧4社の派閥的な対立が続いている。火中の栗を拾えるのは佐藤さんしかいなかったのではないか」と前出の販社社長は推測する。

トヨタ本体の国内販売事業本部長に友山氏が就任するのにも理由がある。国内の流通改革が急務だからだ。

トヨタの国内の受注残は現在約70万台と、国内の年間販売台数の約半分の規模にまで膨れ上がっている。2021年末には約50万台だったが、この半年で20万台も増えた。海外の受注残は約130万台で、国内の受注残が突出している。

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