土井善晴「料理に失敗なんて、ない」断言する真意 「一汁一菜」にこめた、料理するあなたへのエール

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「一汁一菜」を提案する料理研究家の土井善晴さんに話を聞きました(撮影:梅谷秀司)
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NHK『きょうの料理』などでおなじみ、料理研究家の土井善晴さん。1957年生まれの土井さんは、フランスや日本料理の現場で修業を積んだあと、父・勝氏の料理学校で家庭料理研究の道を歩みます。最新刊『一汁一菜でよいと至るまで』には、ベストセラー『一汁一菜でよいという提案』に至るまでの、料理を作る現場に立ちながら思考を深めていく土井さんの半生が綴られます。その道のりはそのまま、戦後のうねるような食の変化と重なっています。
素敵なレシピを紹介する料理研究家の仕事とはいわば正反対ともいえる「一汁一菜」。家庭で作る料理は「ご飯とお味噌汁があればいいんです」という土井さんに、一汁一菜の具体的な実践法や、人を幸せにする料理研究家という仕事について聞きました。

忙しいときにハンバーグなんか作れない

――土井さんが一汁一菜を提唱されるようになったのは、いつ、どのようなきっかけだったのでしょうか。

2015年ごろ「土井善晴の勉強会」というタイトルで座学の講演会をやっていました。そのとき「大人の食育」の回に来てくれた、小さい子のいるような若い人たちが、「料理を作りたいけどできない」とみんな困っておられた。そのときに「味噌汁とご飯でいいんです」と話したのが一汁一菜の始まりでした。

一汁一菜とは、昔から言われる「汁飯香」、ご飯と味噌汁と香の物(漬物)です。味噌汁を具沢山にすれば、味噌汁がおかずの一品を兼ねるので、ご飯と味噌汁だけでも一汁一菜となります。味噌汁にうどんや餅を入れれば、一椀(ひと鉢)で一汁一菜です。

まあ、ご飯を炊いて、味噌汁を作れば、ノルマ達成です。それにプラスして、生活に、気持ちに、時間に、余裕があれば食べたいものを作ればいい。そうして作るおかずはすべておまけの楽しみとなります。あわててお料理を習ったり勉強したりしなくても、その都度、一つ一つ覚えればいいのです。

一汁一菜なら誰でも作れるんです。「料理を作りたいけど、忙しくて作れない」と皆さんよく言われますが、先におかずを作ろうとするからですね。最初はそれがわからなくて、みなさんが何を作ろうとしているのか、私には不思議でした。忙しいときに手間のかかるハンバーグなんか作っていられないでしょう。

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