90年代米国が罹った「みんな子ども症候群」の正体 「スーパーマン」「バッドマン」がヒットした背景

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アメリカ、“喪失の90年代”の正体とはいったい何なのか(写真:designprojects / PIXTA)
1990年代アメリカ。ポスト冷戦を迎え、1970年代、1980年代に国内社会に生まれていた様々な問題もどこかに行ってしまったかのような感覚を、多くの人々に味わわせたのかもしれない。
しかし、それは儚(はかな)い錯覚だった。
流され行く日々の中で、アメリカが見失っていた大事なものとは、いったい何だったのか?アメリカ、喪失の90sの正体とは?
サブカルチャーから社会を考察する歴史家にしてボストン大学教授ブルース・シュルマンと「ファンタジーランドー狂気と幻想のアメリカ500年史」で日本でも多くの読者を獲得しているラジオパーソナリティもこなす洒脱な作家カート・アンダーセン。この二人を迎えた異色の企画『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70-90s』から一部抜粋してお届けする。

ジェネレーションXの登場

1990年代に社会に出た若者たちは、「ジェネレーションX(X世代)」と呼ばれる。

この言葉は、ダグラス・クープランドの著書『ジェネレーションX──加速された文化のための物語たち』(原著1991)に由来しており、1960年代半ばから1980年代初頭にかけて生まれた世代を指す。

彼らは、ベトナム戦争の失敗やヒッピー運動の衰退の後を見ながら育ったため、改革によって社会が良くなるといった夢を見ることはない。一方で、情報技術の発展により、音楽や映画などを浴びるように摂取しながら育った世代でもある。

1990年代前半のアメリカは、冷戦後の不況に喘いでいた。企業はリストラによってなんとか生き残ろうと必死であり、そんな時代に社会に出ていく彼らは、始めから就職難という荒波に直面することになった。

カルチャーを通して現実を生きるジェネレーションX──シュルマン

『リアリティ・バイツ』(1994)は、「ジェネレーションX」と呼ばれる、90年代に成人したアメリカの若者たちを表現したすばらしい映画だと思います。このX世代の葛藤や不確実性を描いた作品としては『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)や『スラッカー』(1991)などがあります。

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